避密(ヒミツ)のサウナ お一人様用が続々誕生
2021年2月9日 06時59分
サウナも一人で満喫したい−。サウナ好きのそんな願いに応える個室サウナが都内で立て続けに誕生した。密集することなく、自分好みの楽しみ方ができ、利用も好調。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、サウナの新様式が広がりそうだ。
品川区小山の銭湯「東京浴場」には男女の脱衣所に一台ずつ、一人用の「おこもりサウナ」が登場した。幅と奥行きが九十センチ。電話ボックスのような一人が座れるだけの空間が一〇〇度超えの空気で満たされる。湿度をアロマ水で自分好みに調整したり、サウナ内のスピーカーを通して自分のスマートフォンの中の音楽を聴くこともできる。サウナの後は浴室のたるの水風呂に入るのが店のお薦めだ。
職場から電車で四十分かけて訪れた横浜市青葉区の会社員日比野功二さん(44)は、台湾のバンドの曲を聞きながら、ゆっくり考えごとをしたという。「一人の方が気が散らず、落ち着けますね」
男湯、女湯それぞれ一日五枠の予約制で、千三十円(入浴料別)。運用初日の一月二十七日からの一週間分は予約サイトでの受け付け開始後、十分間で埋まった。二、三十代のサウナ好きの利用が多いという。
おこもりサウナは、店長相良(さがら)政之さん(22)の発案だ。福島県郡山市での子ども時代、自分の部屋はベランダに洗濯物を干しに行く家族が通って居心地が悪く、お風呂にアイスや本を持ち込んで、三〜四時間過ごした。湯を熱めの四三度にし、星空のような色になる入浴剤を楽しんだ経験から、「一人ならサウナをカスタマイズできる。需要は絶対にある」と考えた。
新宿区・神楽坂には専用店もある。昨年十二月にできた「ソロサウナtune」一号店は、カフェの奥に一人用が三室、最大三人のグループ向けが一室。カフェでテレワークする人の利用もあり、予約は、いつもいっぱいだ。
一人用は六十分、三千八百円。四畳半より狭そうな室内にサウナとシャワー、休憩スペース、脱衣所が収まる。サウナの温度は八〇度前後。幅二メートルの座席は寝転がることもできるし、ちょっと歩けば、直径四十センチのシャワーから水を浴びることもできる。
「自分のペースで楽しむサウナはリッチな体験。ここでサウナ好きになってくれたら一番うれしい」と運営会社取締役の河瀬大介さん(38)。「生活圏でのプチぜいたくが広がっている。ニーズはコロナ後も消えない」と断言し、二、三号店の展開を思い描いている。
◆手で顔を拭かないで
サウナを研究する日本サウナ学会代表加藤容崇(やすたか)医師に効能や注意点を聞いた。
−サウナの効能は。
サウナによく入る人は心疾患のリスクが半減するという研究がある。仕組みは未知だが、有力なのは、血管が軟らかくなる影響だ。
−注意点は。
脱水や寝落ちなどでサウナ中に意識を失うと命に関わる。安全管理は必須だ。
−ソロサウナの店ではスタッフの巡回や緊急ボタンで対策している。
客の危険を機械で察知するなど、もう一歩進んだ対策ができるといい。ソロサウナをきっかけにサウナの安全管理が強化されれば、健康のインフラになれる。
−新型コロナウイルスで気をつけることは。
大前提は、対策している店を選び、店の指示に従うこと。サウナでは人との距離を保ち、しゃべらないで。ソロサウナでも接触感染に注意を。手で顔を拭かず、タオルを使ってほしい。
文・福岡範行/写真・市川和宏、安江実
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