株価急上昇 バブルへの警戒怠るな

2021年2月9日 07時22分
 東京株式市場の平均株価が三十年半ぶりの高水準に達した。コロナ禍に苦しむ街角の経済実態とは乖離(かいり)した数値だ。株価急落など市場に異変があれば被害を受けるのは国民で最大限の警戒が必要だ。
 八日の東証の株価は二万九三八八円で取引を終えた。昨年の年初から六千円以上値上がりしたことになる。この間、大小を問わず多くの企業がコロナ禍に直面し、苦境は今も続いている。
 株価の上昇は本来、企業の健全な成長の結果により起きるはずだ。しかし現在の状況はコロナ対策のための巨大資金の流入が引き起こしており、その内実は「バブル」と断定できる。
 日本は二〇一三年以降、デフレ脱却を目指し大規模な金融緩和を続けてきた。コロナ禍が顕在化すると対策のための財政出動圧力が強まった。日銀は財政を下支えする意味でも緩和政策を続けざるを得ない状況に追い込まれた。
 欧米主要国も似た状況にあり、世界の金融市場は各国の公的資金が流入し渦巻いている。
 この金融環境の中、投資家の間に「国家が市場に潤沢な資金を流してくれるのだから、株を買えば損はない」といった心理が広がっているのではないか。コロナ対策が図らずもバブルをもたらした形で、健全な市場とは程遠い。
 バブルは些細(ささい)なきっかけで崩壊する。針でつつけば割れる風船に似た状態と考えるべきだろう。
 株価の急激な落ち込みは経営者の心理を一気に冷やし、賃金や雇用の抑制による個人消費の低迷、景気後退という最悪のシナリオをもたらす。その際、最大の被害者は市場とは縁遠い多くの国民だ。
 株価暴落は売り逃げした一部投資家や取引に介在した金融機関への怨嗟(えんさ)も生み、社会不安さえ引き起こしかねない。
 今後、金融当局者を含め政府・与党関係者は、異変の引き金をひきかねない不用意な発言をしないよう慎んでほしい。
 日米欧による連携の再強化も必要だ。市場に急激な異変が起きれば主要国間の協調行動が必要不可欠になる。市場では「自国ファースト」の考えは通用しないことを強く指摘したい。
 不要な財政支出も見直すべきだ。追加経済対策にはコロナ禍とは直接関係のない予算が多く盛り込まれた。
 野放図な財政姿勢は市場をゆがめ、人々の暮らしに著しい打撃を与える。このことを政府・与党は肝に銘じてほしい。 

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