男性の性被害に理解を 中学時代に被害の20代「心殺された」

2020年3月18日 02時00分
 恐怖心や恥ずかしさ、さらに捜査や裁判への精神的な負担などから泣き寝入りすることが多いといわれる性被害。「男性も被害に遭っていると言い出しにくい」。新潟市で若者支援に取り組む支援者(38)から寄せられた。取材を進めると、男四人から性的暴行を受けた男性が重い口を開いてくれた。
 「誰にも相談できず、ずっと一人で抱えてきた」
 六年前の冬、部活の先輩だった男四人から性的暴行を受けた二十代男性は、ぽつりぽつりと話し始めた。
 「信じてもらえるのか、軽蔑されるのではないかと打ち明けられなかった。そもそも誰に相談するべきか分からなかった」
 一度だけ、自分が被害を受けたことは伏せて友人にそれとなく話したことがある。「男が襲われるわけないじゃん」。一笑に付された。「そうだよな、あるわけないよな」と応じ、話すことをやめた。「こんなことに巻き込まれるのは自分だけなんだ、自分がおかしいんだ、と無理に自分を納得させた」と振り返る。
 被害を受けた中学生当時、小柄だった男性は男女問わず友人が多かった。ただ学校内の上下関係は厳しく「先輩に気軽に話しかけられる雰囲気はなかった」。
 被害に遭ったのは年の瀬が迫った休日の夕方。友人と待ち合わせをしていた新潟市内の公園。ベンチに座って携帯用ゲーム機で遊んでいると、先輩の一人が近づいてきた。あいさつをしようと立ち上がった瞬間、背後から腕で首を絞められ、頭にポリ袋をかぶせられた。複数の男が馬乗りになり顔、腹を殴られた。首にカッターナイフを当てられ「黙れ!」とどう喝された。助けを求めても、真冬の公園に人影はなかった。
 服を破かれ、性行為を強要された。「唇を切ってにじんだ血の味は忘れられない」。解放され起き上がると、友人がぐったりと横たわっていた。友人も被害に遭っていた。
 翌日から「もう一回やらせろ」「嫌なら金を持ってこい」と要求されるように。断ると「写真をばらまく」と脅された。加害者が卒業するまで三カ月続き、より過激になっていった。
 男性は、被害に遭ってから一度も女性と交際できていない。「間違いなく被害者だけど、俺にも落ち度があったのではないかと考えたこともあった。男としての自信がない」と言葉を詰まらせ、こう続けた。
 「体を傷つけられた。心は殺された」
 (新潟日報・山崎琢郎)

◆相談窓口 対応に遅れ

性被害への注意を促すチラシ。女性を対象にしたものが大半

 性被害者の支援を行う望月晶子弁護士(53)に、男性の性被害について聞いた。
 望月弁護士が主宰する特定NPO法人「レイプクライシスセンターTSUBOMI」(東京)には二〇一二年の開設以降、男性被害者から約二百件の相談があった。相談件数の約一割を占める。望月弁護士は「二十~四十代の相談が多い。男性の被害にはパワハラ、いじめが絡み合っていることがよくある」と語る。
 同NPOは医療機関の紹介に加え、警察への被害届提出の付き添いや訴訟対応も行う。
 まだ被害を語る男性は多くないが、ここ一、二年は相談が増えてきた。「背景には一七年の刑法改正がある」と分析。被害者が女性だけの強姦(ごうかん)罪が廃止され、性別を問わない強制性交罪ができた。「男性も自分が被害者なんだと思えるきっかけになった」と指摘。
 課題は相談体制だ。各地の性被害の相談窓口は、男性の性被害に対応したところが多くない。相談員から「本当に被害に遭ったのか」などと言われてしまうこともあるという。望月弁護士は「幅広い被害者を想定した相談、支援体制の構築が急務だ」と指摘した上で、「被害者の多くは自分を責める。『あなたは悪くない』ということを忘れないで、いつでも相談してほしい」と呼び掛けている。

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