娘の「同性婚」 戸惑いのち祝福 「孫見たい」葛藤も式の二人見て「良かった」

2020年2月15日 02時00分

結婚式を挙げた(左から)宮川侑子さんと山野美都菜さん。父和男さんと母美恵子さんと昔の写真を見ながら笑顔があふれた=東京都内で

 「娘が女性のパートナーと結婚式を挙げます」。東京都内の父親から「ニュースあなた発」にメールが届いた。LGBTなど性的少数者をめぐる社会的な障壁をなくす取り組みは増えるが、親子など身近な関係ほど「言えない」という当事者は少なくない。家族が結婚式を祝うケースはまだまだまれだ。メールに託した思いを聞きに訪ねた。 (奥野斐)
 メールをくれたのは東京都日の出町の山野和男さん(65)。昨年十二月、埼玉県内に住む長女美都菜(みつな)さん(33)はパートナーの宮川侑子さん(30)と結婚式を挙げた。美都菜さんの職場のザ・プリンスパークタワー東京(港区)での披露宴には、親戚、友人、職場の同僚ら五十人余を招いた。
 共通の趣味を通じて知り合った二人は、女性として女性が好きなレズビアン。交際三年半で「結婚」した。和男さんは「娘が女性同士で、皆に祝福されて結婚式をしたことを伝えたかった」と説明する。「マイノリティーへの差別がない社会になってほしい」と、娘たちの了解を得て投稿してくれた。
 ただ、妻の美恵子さん(62)は手放しで喜べたわけではなかったという。交際や結婚を打ち明けられた時は「できれば男の人と結婚してほしい。孫を見たいと思った」と葛藤があったことを率直に明かす。専業主婦として三人の子を育てた美恵子さんは「時代が違うとは頭で分かっているんですが…」と戸惑うことも多かった。友人たちにどう伝えるかも悩んだ。「娘が結婚式をするって自慢したいんですよ。でも、どう見られるかと思うと不安がありました」
 その結婚式が、娘の選択を受け入れるきっかけになったという。

昨年12月の結婚式での美都菜さん(右)と侑子さん。侑子さんはタキシードが着たかったという=本人提供

 式場で隣に座った自らの兄に「どうせ親なんか先に死んじゃうんだから、この先一緒にいてくれる人がいた方が安心」と言われ、「そうだな」と思えた。最初は式への出席を拒んだ侑子さんの父親も大阪から駆けつけ、並んで入場。その姿にじんわり感動した。「友人や同僚、家族に囲まれて幸せそうな二人を見て、『これで良かった』と覚悟ができました」
 美都菜さんは「母が戸惑っていることは分かっていたが、拒絶されることはないと思っていた」と振り返る。男性と交際したこともあったが、四年前に別れたとき「やっぱり男の人は駄目だった」と母に伝えていた。「男の人じゃなくて、その人が駄目だったんじゃないの」と言いながら、母は自分を否定しないでくれた。結婚式は、率直に向き合ってきた家族みんなの出発点になった。
 「まだまだ、双方の親の理解を得て結婚式ができる同性カップルばかりではない」と美都菜さん。二人は、パートナーシップ制度がある自治体への引っ越しも考えている。「今年は世界から注目される東京五輪がある。日本も、同性婚を認めてほしい」

◆身近な理解、まだ不十分

 日本では現状、同性の二人は結婚できない。昨年二月には、同性婚ができない現行の法律は違憲だとして、全国の同性カップルが国を相手に一斉提訴した。世界では現在、二十五カ国以上で同性婚が認められている。国内では、同性パートナーシップを承認する自治体が三十余に増えたが、法整備には至っていない。
 身近な理解もまだまだ不十分だ。LGBT専門の電話相談窓口を設ける一般社団法人「社会的包摂サポートセンター」(東京)の二〇一七年度報告書によると、家族に当事者だと伝えている人は25%で、学校職場より多いものの、友人や医療・公的機関よりは少ない。相談できる人がいると答えた人は40・2%だったが、このうち相談先が「家族」との回答は14・2%。
 相談内容の上位は本人の性的指向や恋愛・結婚、偏見・差別・周囲の無理解が並んだ。

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