在日20年 武漢帰省の中国人女性 日本に永住権でも帰国便乗れず

2020年2月6日 02時00分

中国湖北省武漢市で、生まれて間もない長男の健康を気遣いながら、できるだけ早い日本への帰国を願う女性=本人提供

 【上海=白山泉】日本の永住権を持つ三十代の中国人女性が、生後間もない長男と帰省した湖北省武漢市に足止めされている。新型肺炎の感染拡大で同市が交通を遮断し身動きできない上、日本政府のチャーター機も日本国籍がないため搭乗できなかった。女性は本紙の電話取材に「未熟児で生まれた長男の薬はあと一週間ぐらいしか持たない」と焦りを語った。
 関西地方で働く女性は一月中旬、春節(旧正月)休暇に合わせて武漢の実家に帰省した。日本で大学進学するために高校生の時に来日して以来、日本に約二十年住む。武漢では両親が初孫に会うのを楽しみにしていた。日本で学位を取った中国人の夫も、今は武漢で働いている。
 昨秋に未熟児で生まれた長男は定期的な治療と服薬が必要だが、長男が服用する米国製の薬は中国では入手が難しい。女性は「一カ月分の薬しか持ってきていないので、あと一週間しか残っていない」と話す。
 武漢の新型肺炎の死亡率は4・9%で、湖北省以外の三十倍にも達する。患者の急増に対応できず、医療体制が崩壊していることが背景にある。それだけに女性は気が気でない。
 帰省した直後はまだ街にマスクをしている人もいなかったが、新型肺炎の影響拡大は予想以上に速かった。長男の次回の診察に合わせて予約していた武漢発の航空便がキャンセルされた直後、あわてて他の都市から出発する帰国便を確保したが、さらに武漢全体が封鎖されたため移動すらできなくなった。
 日本に約二十年居住し、納税義務を果たしている女性は、すでに日本の永住権を取得。しかし、日本政府が手配したチャーター機には乗れなかった。「子どものためにもし席が残っていれば」と北京の日本大使館に問い合わせたが、「日本国籍でないと搭乗は難しいと言われた」という。
 湖北省からの政府チャーター機での邦人帰国を巡っては、中国人配偶者の搭乗も問題となっており、茂木敏充外相は五日の衆院予算委で「人道的観点から、中国人配偶者も搭乗を認めてもらうべく、中国側と調整している」と述べた。一方で、永住権を持つ中国人については、外務省海外邦人安全課は「答えられる状況ではない」としている。
 日本政府は一日、湖北省に滞在歴のある外国人の当面の入国拒否を決めたが、女性は「日本国民を守るための政府の決定は理解できる」と話す。一方で「生活拠点も会社も日本にあり、子どもの通院も必要。いつ家に帰れるか、子どもの身体が心配です」と不安を募らせている。
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 読者から本紙宛てに「永住権を持つ中国人の友人が武漢から日本に帰れない。日本で納税もしているのに、チャーター機に乗ることができなかった」とメールがあり、記者が電話取材しました。

◆自国民と外国籍同等に扱う国も

 武漢市などから自国民を退避させるため各国が手配したチャーター機には、外国籍や永住権を持つ人も自国民同様に扱うケースがある。
 英国は一月三十一日、スペインと共同で航空機を運航。両国民約百人のほか、妊娠中の中国人配偶者やスペイン在住のポーランド人が同乗。デンマーク人とノルウェー人も乗せた。フランス政府と欧州委員会が手配した航空機は、約三十カ国の国民二百五十四人が利用。うち約六十人はメキシコやブラジル、ルワンダなど欧州連合(EU)の非加盟国出身だった。
 オーストラリアは三日、二百四十三人を帰国させたが、対象は自国民と永住権を持つ人。千豪ドル(約七万四千円)の帰国費用も政府の補助で賄った。マレーシアが同日、帰国させた百七人には自国民のほか外国籍の家族も含まれていた。
 米政府は一月二十九日に米国民約二百人をチャーター機で退避させたが、米メディアによると、米国籍のない家族らは対象外だったため、退避を見送った国民もいたという。

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