スペースワールド閉園2年 野ざらしロケット 正体は「ICBM」

2020年1月4日 02時00分

スペースワールドのバックヤードで野ざらしになっていたICBMの胴体部分とみられる機材(いずれも読者提供)

 北九州市八幡東区の遊園地「スペースワールド(SW)」の閉園から昨年末で丸二年が過ぎた。SWのバックヤードで野ざらしになっていた「ロケット」の行方を知りたいと宇宙ファンの男性から依頼があった。専門家に聞くと、SWの担当者もロケットだと思っていたものは、米軍の大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられるという。遊園地になぜミサイルが-。背景を探ると、冷戦時代の米国と旧ソ連の「デタント(緊張緩和)」がきっかけとなったようだ。
 男性によると、バックヤードには人工衛星の模型や「ロケット」の胴体部分、エンジンなどが大量に野ざらしになっており、閉園時にファンの注目を集めていた。「展示用模型ではなく、アポロ計画で使用されたロケットの本物ではないか」などと臆測を呼んでいたという。
 当時のSW担当者によると、「ロケット」などは二〇〇九年ごろに千葉県の個人から無償で譲渡された。輸送だけで約二千万円かかったが、展示場所が確保できず、閉園を迎えた。
 ロケットの正体は何なのか。「日本の宇宙開発の父」と呼ばれる故糸川英夫さんの弟子で宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授の的川泰宣さん(77)に残された写真を見てもらったが「分からない」。ただ「ロケットやミサイルについて日本で最も詳しい一人で、この人なら分かるのでは」と、石川県羽咋市立宇宙科学博物館コスモアイル羽咋顧問の高野誠鮮(じょうせん)さん(64)を紹介してくれた。
 博物館の展示用としてロケット輸入にも携わった高野さんは「ICBMの実物で間違いない」と言い切る。「形状やマグネシウム合金特有の白いさびが浮き出ていることなどから実物の胴体部分だ。ロケットなら特殊な塗装で野ざらしにしてもさびない」。高野さんは米軍の一九六〇年代のICBM「タイタンII」だと指摘。米国で実物を間近に見たこともあるという。
 なぜICBMの残骸が日本にあったのか。的川さんは「米軍のミサイルとNASA(米航空宇宙局)のロケットの打ち上げ技術はほぼ同じ」と話す。実際、タイタンIIは弾頭部分を有人飛行用カプセルと入れ替えた宇宙船「ジェミニ」としても運用された。
 高野さんによると、冷戦期に大量生産されたミサイルが、デタントやソ連崩壊で八〇~九〇年代世界中に流出。ソ連崩壊前後には、高野さんにも最新鋭のミグ戦闘機や偵察衛星用レンズの購入打診が秘密裏にあった。大量にミサイルを廃棄した米軍も技術が古いものは弾頭を外して民間に放出。バブル期の日本にはそうしたミサイルを輸入し、ロケットと偽って博物館に売却を持ちかけるケースもあったという。
 どういう経緯で米軍から千葉県の個人、SWへと渡ったのか、今となっては分からない。SWの「ICBM」は閉園後、人知れず鉄くずとして廃棄処分された。平和な遊園地にミサイルの残骸があったことは、世界中に兵器があふれる現実を皮肉な形で示したのかもしれない。 (西日本新聞・内田完爾)

スペースワールドのバックヤードで野ざらしになっていたICBMのものと思われるエンジン(右手前)

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