新型コロナ起源解明にはほど遠く WHO調査団は中国・武漢で何を見たのか

2021年2月10日 06時00分
 新型コロナウイルスの発生源を調べる世界保健機関(WHO)の国際調査団が9日、中国湖北省武漢市での現地調査を終え、記者会見に臨んだ。調査団とともに会見した中国の専門家は、ウイルスの由来が武漢以外の場所であることを強く示唆し、「武漢起源説」に区切りをつけたい思惑をにじませた。しかし、今回の調査では発生源の解明には程遠く、現地視察は中国主導で実施されたことを印象付けた。(上海・白山泉、北京・中沢穣)

◆武漢起源説、否定する中国側

 「中国は終始、WHOに協力してきた。全世界のウイルス起源をめぐる研究に関し中国部分は終了した」

1日、中国湖北省で、警備員がずらりと並ぶ厳重な管理態勢のもと、移動するWHOの調査チーム=AP

 中国の衛生当局者は政府の対応を正当化する発言から始めた。続けて中国の専門家を代表し、清華大の梁万年教授がウイルスの武漢起源説に否定的な見解を示した。
 梁氏はウイルスはコウモリやセンザンコウが起源になった可能性に言及した上で「中国内の野生動物からは新型コロナは検出されていない」とも強調。さらに新型コロナは低温下でも生存するとの研究結果を披露し、輸入冷凍食品から感染が広がったとの中国側の説を繰り返した。
 一方、国際調査団を率いるデンマークのピーター・ベン・エンバレク博士は「(調査によって)流行初期の状況について理解が大きく進んだわけではない」と述べ、起源をめぐる調査に今後数年かかるとの見通しも明らかにした。

◆中国主張の説に沿う視察

 しかし国際調査団の訪問先を見ると、武漢起源説を否定したい中国側の政治的意図が透ける。まず調査団は、習近平政権のウイルス対策を宣伝する特別展示場に案内され、中国政府を称賛する展示を見学した。その後、感染流行初期に多数の感染者が確認された卸売市場を訪れたが、閉鎖されてから既に1年以上が経過しており、感染源を特定する手掛かりがないことは明らかだった。
 また卸売市場に輸入冷凍食品を納入していた大型倉庫なども視察。中国政府が主張する「冷凍食品に付着したウイルスは海外から中国に流入した」という説に沿う視察が優先された。

◆終わる調査、消えぬ疑念

 国際調査団は、トランプ前政権がウイルスの流出元と主張した武漢ウイルス研究所も視察、約3時間半にわたって滞在した。コウモリを宿主とするウイルス研究で知られ、「バットウーマン」の異名もある石正麗研究員とも意見を交換。研究所から流出した可能性についてベン・エンバレク氏は会見で「極めて低い」との見方を示した。
 一方、米国のブリンケン国務長官は今月1日、米テレビの取材に「必要な情報提供について、中国の対応は十分とはいえない」と発言。今後は武漢での調査は行われない見通しだが、中国側の透明性にはなおも疑念が消えていない。

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