既に限界 ケアマネ悲鳴 経営改善へ担当人数引き上げ ICT導入条件「激務変わらず」

2021年2月10日 07時20分
 厚生労働省は四月から、介護保険のケアプランを作るケアマネジャー(介護支援専門員)一人が担当する利用者数を増やす。ICT(情報通信技術)導入などが条件で、同省は「強制ではない」とするが、ケアマネからは「今でも手いっぱい」と悲鳴が上がる。現場を訪ねた。 (五十住和樹)
 東京都渋谷区の居宅介護支援(ケアマネ)事業所で働く指田真理子さん(57)は朝九時に出勤し、午前と午後におおむね二人ずつ利用者宅を訪問する。滞在時間は平均約一時間。担当する三十五人の利用者を月一回必ず訪問し、状況を確認して家族からの相談も受ける。
 介護疲れや介護離職の心配がある人、認知症への対応など課題を抱える家族も多い。引きこもりの子どもが五十代、親が八十代になって生活が困窮する「8050問題」もある。「引きこもりの人はヘルパーなど他人が家に入るのを嫌がる。介護サービスを勧めても『自分でやるからいい』と断られ、必要なサービスを提供できないケースもある」と苦労を話す。
 業務は多岐にわたる。訪問の合間を縫って行う事務作業が終わらず、残業になることもしばしば。ケアプランに沿って訪問介護などの各事業所へサービス内容を示した提供票をファクスで送る。プラン通りにサービスが適正に行われたかを確認する仕事も。サービス内容の変更が必要になれば、あらためて利用者を訪問し心身の状況をみてプランを作り直す。
 会議も多い。訪問や通所介護などの事業者を集めて行うサービス担当者会議は月に五〜七回。通所リハビリ事業所が利用者同席で開く会議や、地域の多様な福祉課題に対応する地域包括支援センターなどが主催する「地域ケア会議」にも出る。認知症の人らの通院に付き添って医師の指示を聞いたり、病状を説明したりすることも多い。
 ケアマネの職務でないが、必要に迫られ、やむを得ず対応することは日常的。指田さんは「介護保険(でカバーするサービス以外)の穴があいている部分を埋めている」と説明する。
 厚労省は今回、ケアマネの担当利用者数が四十人を超えると介護報酬が段階的に減る現在の仕組みを、ICT導入や事務員の採用などの条件を満たした場合、四十五人を超えるまで減算しないように緩和する。
 同省の介護事業経営実態調査などによると、調査を始めた二〇〇一年以来、ケアマネ事業所は一貫して赤字。利用者数を増やして経営改善を図る狙いがある。
 ICT導入について、指田さんは「訪問時に利用者の状況を携帯端末で入力したり、各事業者がオンラインで情報共有できたりすれば便利」と歓迎。一方で「仕事量はそれほど減らない。利用者と話をしないで端末に向かっていていいのか」と気をもむ。同省が例示する人工知能(AI)によるケアプラン作成は「利用者一人一人の生活様式が違うので使えない」とも言う。
 介護保険が始まった時からケアマネとして働く立教大元教授の服部万里子さん(74)は「利用者の口腔(こうくう)や服薬状況を確認して主治医に伝えるのが義務化されるなど業務は激増し、ケアマネは追い詰められている」と指摘。「要介護者が増え、ケアマネも増やさねばならないのに『やりたくない仕事』になっている。担当利用者数を増やすのは逆行しており、介護報酬の基本単価を上げて赤字に対応するべきだ」と話す。

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