<炎上考>水着の女性が「養って」 鹿児島県志布志市がウナギ動画で失敗した理由 吉良智子

2021年2月10日 11時00分

鹿児島県志布志市が特産品のウナギをPRするために作成した動画の一場面

 「彼女と出会ったのは、1年前の夏だった」。動画はそんな男性の声で始まる。スクール水着を着た黒髪の若い女性がプールから顔を出し、「養って」とささやく。「その日から彼女との不思議な生活が始まった」とナレーションは続く。女性は水着のままプールサイドで遊ぶ。季節が秋から冬に移り変わっても、なぜか水着のまま食事をし、寒空の下、野外で寝る。そして1年。女性が「さよなら」とプールに飛び込んだ瞬間、「その美しい人の名はうな子。」の声と字幕が流れ、ウナギが泳ぐシーンに変わる。つまり、女性の正体はウナギだったのだ。
 これはウナギが名産の鹿児島県志布志市が作成した動画で、2016年の公開当時大きく炎上した。まさか自治体が炎上目的で広告を作ったわけではあるまい。養殖ウナギを擬人化し、最後に種明かしをすることで驚きを狙ったのだろうが、残念ながら失敗している。ナレーションが男性であることから、視聴者は男性が若い女性を「飼育」しているという構図を容易に想像する。ウナギを連想させる仕掛けや小道具(女性の手に粘液がついている、スクール水着、クネクネした動きを演出するフラフープ)は、アダルトビデオでよく使われる手法だ。特にこの動画はより幼いスクール水着の少女が「養って」とささやくシーンで終わる。スクール水着というモチーフは、チャイルドポルノで多用される、幼さを性的消費するアイコンと重なり合い、幼児への性虐待を喚起する。
 視覚イメージはそれ単体として存在することはできない。視覚イメージが発する意味は、社会の中で作られる。この動画の例に置き換えて考えると、視聴者はそこに男女の非対称性や過剰に性的なメッセージを受け取ることになる。
 この動画は毎年授業で学生に見せている。最初のうちは種明かしで笑いが起きることもあったが、最近は皆まったく笑わない。つまり「時代おくれ」ということである。少なくとも公的機関である自治体が発信すべき動画ではなかった。

 きら・ともこ 美術史・ジェンダー史研究者

(2021年2月3日東京新聞夕刊に掲載)

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