障害者雇用「数合わせ」? 面接官「暇な方がいいよね」

2019年3月25日 02時00分

選考試験の申込書を手に、面接などの実態を訴えた受験者の男性=東京都内で

 「雑用の業務内容に納得するよう面接官に迫られ、やりがいをそぐような同意も求められた」。中央省庁の障害者雇用水増し問題を受け、今年初めて導入された障害者対象の国家公務員試験を受けた首都圏の男性が、本紙に体験を語った。多くの省庁が法定雇用率達成のため「数合わせ」をしているような対応に疑問の声を上げた。 (井上靖史)
 「政策的な仕事にも携われる」。男性はある省庁の募集要項の文言にひかれて受験したが、「面接官から何度も確認されたのは真逆の内容だった」と憤る。「シュレッダーに掛けたり、コピー機の紙を補充したりする補助的な仕事だけどいいか」と繰り返してきたという。
 男性は、民間ではほとんどない障害者の正規職員への道に魅力を感じ、複数の省庁を受験した。「障害に配慮して臨床心理士を面接に同席させ、私が働きやすい環境を丁寧に聞いてくれる省庁もあった」。しかし、対応に思わず首をかしげる省庁も多かった。
 ある省庁の面接官は、男性が前の職場を辞めたことに触れ、「協調性がないんじゃないの?」。敬語や丁寧語も使わず、「上から目線」で人への敬意に欠けるような姿勢を感じた。ある官庁では「暇な時間帯もあるけど大丈夫? 暇な方がいいよね」とやりがいをそぐような同意も求められた。
 複数の省庁で二次試験の面接を受けた別の男性にも取材した。男性は「履歴書やエントリーシートは面接日に持参した。面接の十五分ぐらい前に受付で渡し、障害者手帳や一次試験の合格通知も見せた」と言い、これが各省庁ほぼ同じ対応だったと説明。「企業なら普通、履歴書を事前に郵送し、面接官が目を通す。特に障害者の場合、受け入れ環境を考える必要があるはずなのに」と疑問視した。
 人事院は本紙の取材に「面接などの二次選考は各省庁の判断で行っている」としつつ、多くの省庁で履歴書をその場で読むなどの対応を認め、「昨秋に試験実施が決まり、今月中に採用しなければならなかった。事前に郵送してもらう余裕がなかった面はあると思う」と釈明した。
 障害者の就労を支援する社会福祉法人「多摩棕櫚亭(しゅろってい)協会」(東京都国立市)の担当者は、受験者の体験や他の支援団体から聞いた話として、面接以外の問題点を挙げる。履歴書やエントリーシートの書式が省庁ごとに異なり障害者の負担が大きいこと、二次試験が平日にばかりあるので仕事を休まなければいけないこと、二次試験の申し込みを先着順にして一日で締め切った省庁もあったという。
 冒頭の男性は「障害者にやさしい職場は健常者にもやさしい職場であるはず。やりがいづくりも含め、もっと省庁が民間を引っ張って模範になってほしい」と注文を付ける。
<障害者対象の国家公務員試験> 中央省庁の障害者雇用水増しを受けて初実施。人事院が2月3日行った教養や作文など共通の1次選考を6900人が受験し、2300人が1次選考を通過。今月22日に合格者754人が発表された。働く人に占める障害者の割合を示す障害者雇用率は国の43機関で1.22%(昨年6月現在)で、法定雇用率の2.5%を大きく下回る。国は今年1年で障害者4000人を採用予定。

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