女性蔑視発言から8日…森喜朗会長辞任へ高まり続けた批判 最後はスポンサーやIOCからも圧力

2021年2月11日 22時11分
 女性蔑視発言を巡り、辞意を固めた東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)。世間の批判に加え、最後は国際オリンピック委員会(IOC)やスポンサーなどの圧力が高まり、発言から8日後の決断となった。コロナ禍で開催そのものが危ぶまれる中、世間や海外とずれた感覚は今後も組織委の課題となる。(原田遼)

◆米テレビ局が「彼は去るべきだ」

 「森会長は性差別で(テニスの)大坂なおみらから批判を受けた。彼は去るべきだ」。11日未明、米テレビ局NBCがホームページに衝撃的な記事を掲載した。同局は2032年までの10大会の五輪放送権を獲得し、IOCに計約120億ドル(約1兆3000億円)を支払っている。五輪の競技時間や開会式の演出にも意向が反映されるなど、IOCに最も強い影響力を発揮する。
 9~10日にはIOCや最高位スポンサーのトヨタ自動車も「発言は不適切」とコメントするなど内堀を埋められ、NBCの配信で決定打となった格好だ。

◆組織委の若手から「やめてほしい」の声も

 関係者によると、4日に一度辞意を漏らした森氏を引き留めたのは、武藤敏郎・組織委事務総長や遠藤利明元五輪相ら「側近」5~6人。ある幹部は「収束を急ぎすぎた。その後の会見は大失敗で、もっと準備して臨むべきだった」と悔やむ。
 森氏は発言を謝罪、撤回をしたものの言い訳を繰り返して開き直り、記者に声を荒らげたりする態度に、世間だけでなく多くの関係者が失望。組織委の若手職員から「やめてほしい」との声も漏れた。
 会見後の対応も遅かった。組織委は発言の謝罪メールを6日に大会ボランティア全員に、9日に聖火ランナー全員に送ったが、すでに辞退の流れは止められず、8日に組織委が発表しただけでも、390人のボランティアが辞退を申し出た。その間、武藤氏ら幹部は一度も取材に応じず、日々悪化する事態を見守ることしかしなかった。

◆新体制で信頼回復はどこまで

 森氏の辞任を受け、信頼回復は今後、どこまで進むのか。新型コロナウイルス感染症の拡大により、大会に向けた選手の特例入国再開や、競技会場や選手村などで一日700人が必要とされる医師・看護師の確保など、政府に協力を仰ぐことも多い。人脈と調整力にたけ、政界にも影響力が絶大だった森氏が退場する緊急事態に、組織委幹部は「開催が危ぶまれる中、森さんなしで、どこまで政府と交渉できるか」と心配する。
 新会長には川淵三郎・日本サッカー協会元会長が就任する見通しだが、陸上の元五輪代表で法政大の杉本龍勇教授(スポーツ経済学)は「体育会の古い体質の方では、組織委は変わらない」と懸念する。
 世界ではコロナ禍に加え、LGBTなどの性的少数者や障害者への差別、民族紛争、環境破壊などあらゆる課題がある。五輪では205の国・地域から、さまざまな背景を持つアスリートが集まる。杉本氏は「スポーツが世界を変えるという考えは改めるべきだ。コロナ禍でやるなら民意や国際感覚を理解できて、現代社会の変化に対応できるリーダー、組織でないといけない」と指摘した。

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