個人の問題で片付けず、「おかしい」と言える土壌を<森会長辞任>

2021年2月11日 23時08分

東京五輪・パラリンピックの選手村村長就任の記者会見を終え、組織委の森喜朗会長(左)と握手を交わす川淵三郎氏=2020年2月3日、東京都中央区で

 女性蔑視発言を巡る批判の高まりに、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)が辞任の意向を固めた。「最後まで対応が遅すぎた」。大会を支えるボランティアや発言に抗議をしてきた人たちの多くは「辞任は当然」と受け止めた。トップの交代で問題は幕引きとなるのか。「辞任は終わりではない」と、社会を変える契機にすべきだという声は根強い。

◆辞任は終わりじゃない、社会変える契機に

 森会長の処遇検討と再発防止などを求め、開始1週間で14万筆以上の賛同が集まったオンライン署名の呼びかけ人の一人、慶応大4年の能條のうじょう桃子さん(22)は「辞任は一つの区切りとして良かった」と歓迎した。
 それと同時に「個人の問題として片付けるのではなく、発言の容認や一時は慰留した組織委の体制、体質がどう変わるかに注目したい」。今後、政府や東京都、大会組織委員会に署名を提出する予定だ。
 森会長の退任と東京五輪・パラリンピック開催中止を求める抗議声明を出した全国組織の女性団体「ふぇみん婦人民主クラブ」の片岡栄子共同代表は「辞任は当然と思う」ときっぱり。ただ、森会長の発言を周囲が止めなかった状況こそ問題だとし、「おかしいと思ったことに声を上げられる土壌をつくっていかなければ」と話した。
 また、スポーツ界の人権問題に詳しい山崎卓也弁護士は「今回のような不祥事ではトップの辞任に焦点が当たりがちだが、より重要なのは原因と再発防止策を考えること」と指摘。「できないことを責める減点主義でなく、スポーツ界をより良く変えるための加点主義の発想を持って、今後の人権侵害防止策に向けて行動することが重要」と強調した。(奥野斐)

◆どんな権力者も差別は致命傷に

上野千鶴子東大名誉教授

 上野千鶴子東京大名誉教授(社会学)の話 辞任は当然。ツイッターの「#わきまえない女」などで女性の怒りが噴出し、「誰であっても差別的な言動は看過しない」という世論の盛り上がりに圧された。これからはどんなポストにいる権力者であれ、性差別的な言動が致命傷になるということを学ぶ契機になるだろう。これは森会長個人の資質の問題ではない。同調した組織委の体質、現役アスリートの発言が出てきにくいスポーツ界の体質、女性に「わきまえ」を要求する日本のホモソーシャル(女性・同性愛者嫌悪に基づく男性同士の連帯)社会の抱える問題がつきつけられた感がある。

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