<評>歌舞伎座「二月大歌舞伎」 小気味いい仁左衛門、玉三郎

2021年2月12日 07時46分
 第一部「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう) 十種香」は中村魁春の八重垣姫の清廉さ、品格の高さが第一。市川門之助の勝頼はやや硬いが、姿の古風さがいい。片岡孝太郎の濡衣(ぬれぎぬ)は時々世話めくのが惜しい。中村錦之助の謙信は柄にない役だが、意外な押し出しのよさを見せる。
 「泥棒と若殿」は、家中の権力争いのために幽閉された若殿と、そこに忍び込んだ泥棒との奇妙な生活と心の交流を描く。尾上松緑の伝九郎に愛嬌(あいきょう)があり、坂東巳之助の松平成信は伝九郎に別れを告げて武士としての道を歩もうと決心した後の精悍(せいかん)さが印象に残る。
 第二部「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」は、鬼門の喜兵衛と土手のお六のゆすり場を中心に「柳島妙見」「小梅莨屋(たばこや)」「瓦町油屋」の三場。苦みの効いた片岡仁左衛門の喜兵衛と坂東玉三郎のお六が、息もぴったりに小気味のいい舞台を見せる。続く「神田祭」では、仁左衛門の鳶(とび)頭と玉三郎の芸者の美しさ、睦(むつ)まじさに客席がどよめく。
 第三部は十七世中村勘三郎の三十三回忌追善狂言が並ぶ。まずは「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら) 袖萩祭文(そではぎさいもん)」。中村勘九郎の安倍貞任(さだとう)は描線の太い豪快さがよく、ダイナミックなケレンも鮮やかに決まる。中村七之助初役の袖萩は、美しいが感情表現が過多で哀れさが薄い。いずれも義太夫狂言らしい厚ぼったいコクが欲しい。中村長三郎のお君はせりふもしっかりしていて殊勲賞。中村梅玉の八幡太郎義家、中村歌六の平傔仗直方(たいらのけんじょうなおかた)、中村東蔵の浜夕、中村芝翫(しかん)の安倍宗任(むねとう)と顔が揃(そろ)う。
 「連獅子」は九歳の中村勘太郎と父勘九郎による気迫のこもった舞台。二十七日(十八日は休演)まで。
 (矢内賢二=歌舞伎研究家)

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