沖縄にあった鉄道 土屋武之さん

2020年3月31日 02時00分
 「ゴムタイヤを履き、道路の上を走ることができるSL」が主人公という設定は荒唐無稽。だがテレビドラマ「走れ!ケー100」(1973~74年)は人気を博し、半年間の放送予定だったのが、急きょ1年に延長された。その最終回直前の第50話「おじいちゃんの軽便鉄道」は、戦前の沖縄に存在した沖縄県営鉄道がテーマだ。元機関士のおじいちゃんを、もう一度、蒸気機関車に乗せてやりたいとの孫の思いに応えるべく、ケー100が駆けつける。目が見えないおじいちゃんは、在りし日の軽便鉄道を思い浮かべつつ存分に運転を楽しむと、そのまま事切れた。
 那覇と嘉手納や糸満、与那原を結ぶ路線を持っていた沖縄県営鉄道は、地元では「ケービン」の愛称で親しまれていた。開業は1914年。しかし太平洋戦争末期には実質的に日本軍専用となり、たびたび空襲にも見舞われた。そして45年4月。アメリカ軍が沖縄に上陸すると、鉄の暴風とまで言われた砲爆撃で、文字通り跡形もなく破壊されてしまう。今に残る遺構は、発掘された那覇駅の転車台跡や、与那原駅の復元駅舎=写真=などわずか。戦後の占領下では正式な廃止手続きも行われないまま、この世から「消滅」してしまったのである。

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