コロナ禍の孤独感から心臓病や脳卒中に? 官民一体で孤立解消に取り組むイギリス

2021年2月15日 17時00分
 新型コロナウイルス禍のロックダウン(都市封鎖)が繰り返される英国で、1人暮らしの人たちの孤立を防ぐ取り組みが活発になっている。日本で注目が集まる孤独担当大臣を3年前に設けて孤立問題への対策を進めてきたが、昨年春のロックダウン時には7人に1人が孤独感で心の健康を損なったとの推計が。このため官民一体で対策を加速させ、軽い運動のオンライン講座や電話によるおしゃべり活動などを展開する。(ロンドン・藤沢有哉)

昨年12月、英南部ブリストルで、マーマレード・トラストのスタッフからクリスマスプレゼントを受け取るお年寄り(中)=同団体提供

 「相次ぐロックダウンで、かつてないほど大勢が孤独感に襲われている。何らかの方法で他人とのつながりを築くことが重要だ」。英南部ブリストルの慈善団体「マーマレード・トラスト」のミーガン・ウォーカー広報担当は強調する。
 同団体は主に地元の独居老人を支援。ボランティアスタッフがそれぞれの相手に週1回、電話をかけて世間話をしている。昨年12月には約200人を訪ねてクリスマスプレゼントを手渡し、お年寄りの孤独感を癒やした。
 英国ではコロナ禍の前から、官民が孤立の防止に力を入れてきた。きっかけは、欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票があった2016年、残留派のジョー・コックス下院議員=当時(41)=が極右の男に殺害された事件だった。コックス氏は社会の分断に危機感をもち、社会的孤立の解消をライフワークにしていた。与野党は遺志を継ぐために結束。政府は18年1月に孤独担当相を設けて民間団体との協力を推進し、集いの場の創設や孤立者への訪問といった取り組みが盛んになった。
 だが、コロナ禍のロックダウンで従来の一部活動は停止し、孤立問題は幅広い年齢層で深刻化した。英統計局は、昨年春の1回目のロックダウン時には英本土の住民全体の14・3%が孤独を感じ、心の健康を損なったと推計。政府もこの時期から対策を本格化し、昨年12月には、慈善団体などの活動に対する追加の資金援助を決めた。
 一連の支援で官民の取り組みが進み、各地域の図書館は孤独感を和らげてもらうため、医療専門家らが効果があると判断した電子書籍をウェブサイトで貸し出すサービスを拡大した。
 歌やダンス、語学などのオンライン講座を開く団体も多く、このうち全国的な慈善団体「Age UK」は「英国にはインターネットを使ったことがない65歳以上が推定約400万人いる」と指摘。インターネット関連機器の使い方も電話で教えている。
 コロナ禍で孤独対策が重視される理由について、孤独担当相が所属する英デジタル・文化・メディア・スポーツ省の担当者は「孤独感の苦しみは心臓病や脳卒中につながる恐れがある。社会がより重大な健康危機に陥る前に対策を講じる必要がある」と説明した。

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