季語を使いこなすフランスの子どもたち 授業で深まるアイク(俳句)の魅力と国際交流

2021年2月15日 12時00分
 フランスで「Haïku(アイク)」として仏語辞書にも掲載され、高い認知度を得ている俳句。20世紀初頭には愛好家がいたとされ、近年は公立校の授業にも取り入れられているという。パリ市内の小学校でその一例を見学し、児童たちが遠い日本に思いをはせながら句を詠む姿を垣間見た。 (パリ・谷悠己)

2月、パリのブルソー小学校で、児童たちが作った俳句を点検するラバ教諭

◆音節数で「5・7・5」を表現

 「アイクにはキゴ(季語)が必要だ。どういうものか、覚えている人は?」
 今月初旬、パリ北部のブルソー小学校。5年の国語(フランス語)の授業でジェローム・ラバ教諭が質問すると、児童たちが一斉に手を挙げ「季節を表す単語のことです」と答えた。
 「よし、今日は春の季語で作ってみよう。情景を思い浮かべながら考えて」。教諭の呼び掛けと同時に取り組み始めた児童たち。フランス語では文字数ではなく音節の数で「5・7・5」を表すのが特徴だ。
 「日本では春と言えば桜だと聞いたことがある」というスカンデル君(10)は、「芽が開く 桜の中を 歩きたい」と詠んだ。音節数の関係で「桜」は本来の単語「cerisier」ではなく「fleurs roses du Japon」(日本の桃色の花)という表現を選んだ。パリにも桜が咲く場所が複数あるといい、多くの児童がちなんだ句を作っていた。

◆授業導入で異文化交流のチャンスに

 「テーマと音節にぴったり合う単語を探すのは難しい。児童たちにとって語彙ごいを増やすいい機会になった」。こう話すラバ教諭が、これまで経験がなかったという俳句の授業を企画したのには理由がある。
 同校は昨秋、東京都北区の滝野川もみじ小学校と姉妹校提携を結んだ。「次回オリンピック開催都市の学校として今大会を開催する東京の学校と提携できれば、異文化交流のチャンスになると考えた」。こう狙いを話すポール・カサビアンカ校長は、各教諭に日本にちなんだ授業のアイデアを求めたという。
 そこでラバ教諭が注目したのが、パリ市教委の週報に掲載されていたパリ日本文化会館主催の俳句コンクール。クラスの全児童27人での応募を決め、授業で取り組み始めたという。
 「コロナ禍で変化した日常」がテーマのコンクールには、フランス語で768句の応募があり、俳人のまゆずみまどかさんらによる選考結果は先月末に発表された。「ウイルスの 日々長くして 蒸し暑い」と詠んだラバ教諭の教え子リナさん(10)は小学生以下の部門で審査員賞を受賞した。
 リナさんは「都市封鎖で家に居続けなければいけなかった時期の寂しさや怖さを表現した。考え始めた時は難しくて嫌になったけど、いい俳句ができてうれしかったので、これからもたくさん作りたい」と話す。

◆俳句で育まれる「生」への興味

 2003年に創設された「フランス語話者俳句協会」によると、日本などアジア文化への関心がもともと高く、自然や内面の美を大切にする傾向が強いフランス人にとって、俳句はまず大人の教養として定着。10年ほど前からは学校教育にも導入され始めた。
 同会のメンバーが授業を補助する学校は幼稚園から高校まで約250校あるといい、中学1年の国語の教科書に松尾芭蕉や小林一茶といった巨匠らの俳句の仏語訳が掲載されるようにもなった。
 同会の学校教育担当イザベル・アスンソロさん(55)は「俳句は自然への敬意や身の回りの『生』への興味をはぐくみ、何げない感情を簡潔な言葉で表現する力も付く。教育的効果は非常に大きい」と話す。
 フランスの若年層は漫画やアニメなどの「クールジャパン」コンテンツを通して日本文化の現代的側面に触れていることが多いだけに、俳句を学ぶことで伝統的側面にも興味をもった親日家として育ってくれることも期待できそうだ。

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