目の片隅に映る港 土屋武之さん

2019年7月9日 02時00分
 こうの史代(ふみよ)原作の漫画で、2016年に映画化され大ヒットした「この世界の片隅に」は、鉄道のシーンがリアルであることも話題となった。主人公のすずが住む広島県呉市付近を走る列車も何度か登場する。
 呉線は軍港へと通じる路線として1903年に海田市-呉間が開業。35年には三原まで全通した。建設目的からして国の重要路線の一つで、1等車も連結した東京直通の急行が走った。戦後も重工業都市に転じた呉へのアクセスとして、東京や大阪を結ぶ特急、急行が運転されていた。
 この鉄道のエピソードの一つとして、呉軍港が見下ろせる川原石駅付近=写真=では、車掌が強制的に日よけで車窓を隠させたということがよく知られている。機密保持との名目で、作品でも描かれた。
 しかし、これは太平洋戦争が始まってからの話だ。戦前は軍艦の姿を見るのも撮るのも比較的自由で、まちの写真館がお土産品として絵はがきを売っていたほどであった。
 今では埋め立てが進み、広島市のベッドタウンとして沿線にマンションも立ち並ぶようになった。別な意味で、港の風景を見ることは難しくなっている。

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