見えぬ「廃炉」の姿 東電と政府は具体像示せぬまま 福島第一原発の今

2021年2月17日 06時00分
 東京電力福島第一原発では、6基ある原子炉のうち3基でメルトダウン(炉心溶融)が起き、世界最悪レベルの事故に発展した。最も過酷な現場である原子炉建屋周辺は空間放射線量が下がったものの、建屋内の汚染はひどく、人が立ち入れない場所も多い。溶融核燃料(デブリ)の取り出しは調査段階から難航。廃炉の道のりは険しく、長い。(小野沢健太、地上からの写真は山川剛史)

①小さいがれきはかなり除去された1号機原子炉建屋の上部。しかし、使用済み核燃料プールは大きながれきの下にある=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

②1、2号機排気筒の根元付近では、超高線量の配管撤去に向け作業が行われていた。毎時4500、6000ミリシーベルトという地点もある=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

◆なお厳しい放射能汚染が作業の行く手阻む

 快晴となった1月18日、1~4号機の原子炉建屋西側にある高台に立った。線量計は、毎時116マイクロシーベルトを表示した。除染が進んだといっても事故現場まで100メートルの地点に近づくと、線量は跳ね上がる。下を見ると、1号機の前には、顔全体を覆うマスクを着けた防護服姿の作業員たちが、打ち合わせをしていた。

④使用済み核燃料の取り出しが終盤にさしかかった3号機原子炉建屋前には、多くの作業員がいた=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 1号機建屋上部は水素爆発で吹き飛び、骨組みがあらわになっている。使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しに向け、大型カバーで建屋上部はすっぽりと覆われる予定だ。

③2号機脇で、使用済み核燃料取り出しに向けた構台の基礎工事をする作業員たち。放射線を遮るための黒いベストを着ている人も=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 水素爆発を免れた2号機は、内部の汚染がひどい。プールからの核燃料取り出しのため、建屋南側に構台の設置が進んでいた。側壁に開口部を造り、プールにアプローチするという。

⑤かつては松林が広がり、砂利道も多かったが、粉じん飛散防止のためモルタルやアスファルトで徹底的に舗装された。奥は3号機(左)と4号機=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

◆1、2号機排気筒下部は命にかかわる高線量

 構内の屋外では、最も線量が高い1、2号機排気筒下部に、数人の作業員がいた。1号機をカバーで覆うため、排気筒につながる配管の撤去が必要となる。配管と筒の接続部の線量は毎時4350ミリシーベルト。命に関わる線量で、1分もかからずに作業員の年間被ばく限度50ミリシーベルトを超えてしまう。

⑥津波で流され、通路をふさいだ重油タンクは、1号機北側の空きスペースに置かれていた=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 高台から原子炉建屋の反対側を見ると、斜面の黒さが目立つ。東電は汚染表土を舗装し、線量を下げた。海側の敷地の線量は、8年前の取材時に比べて10分の1近くまで下がっていた。

⑦津波で流され、道路をふさいだ事故直後の重油タンク=2011年3月22日撮影(東京電力提供)

◆あの日、津波で流されたタンクが道をふさいだ

 1号機北側にある重油タンクは底がつぶれ、ひしゃげていた。元々は海沿いにあったが津波で流され、1号機建屋脇の道路をふさいだ。津波の威力を物語る。
 原子炉からのデブリ取り出しは、2号機で試験的な採取が計画されているだけで、1、3号機は工法すら未定。東電と政府は2041~51年の廃炉完了を計画している。しかし、当初あった原子炉建屋の解体計画は消え、廃炉がどんな状態なのかすら分からない。(次回は3月3日に掲載)

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