在日モンゴル族にも及ぶ中国当局の抑圧の影響 「反中勢力の温床」と監視強化…抗議も上げづらく

2021年2月17日 12時00分
在大阪中国総領事館前で昨年12月、中国の抑圧政策に反対し自殺した人たちの写真を掲げながら、抗議の声を上げる在日モンゴル族たち。参加者は10人余りにとどまった=大阪市西区で

在大阪中国総領事館前で昨年12月、中国の抑圧政策に反対し自殺した人たちの写真を掲げながら、抗議の声を上げる在日モンゴル族たち。参加者は10人余りにとどまった=大阪市西区で

  • 在大阪中国総領事館前で昨年12月、中国の抑圧政策に反対し自殺した人たちの写真を掲げながら、抗議の声を上げる在日モンゴル族たち。参加者は10人余りにとどまった=大阪市西区で
 中国ではウイグル族やチベット族だけでなく、内モンゴル自治区のモンゴル族への抑圧も昨年来、際だってきた。中国政府は昨年9月、自治区のモンゴル族が通う学校で中国語教育を強行。締め付けの影響は日本など海外在住のモンゴル族にも及ぶ。中国当局が在外モンゴル族について「反中勢力」の温床とし、監視を強めているためだ。日本で抗議の声を上げる余地も狭められつつある。 (浅井正智)

◆通信やりとり筒抜け…現地と連絡難しく

 「こちらは元気だ。もう切るよ」。東海地方に住む40代のモンゴル族ゾリグさん(仮名)が昨年12月、電話をかけた自治区の兄は、よそよそしく言うとすぐ電話を切ってしまった。
 中国でよく使われる通信アプリ「微信(ウィーチャット)」では、通話やメッセージのやりとりが中国当局に筒抜けになっているとされる。ましてゾリグさんは日本で対中抗議活動に関わる。兄からは「過激な行動はやめてくれ」と言われたこともある。
 今回取材した10人ほどの在日モンゴル族は「現地との連絡が難しくなった」と口をそろえた。「中国当局は海外の自治区出身者が反政府活動をあおっていると決め付けている。日本から家族に連絡があると警察が来て尋問する」(世界南モンゴル会議のジャルガル副会長)という背景がある。

◆自治区での抗議活動も「日本にいる弟の指図か」

 自治区では、中国語教育の方針が明らかになった昨年8月末から授業ボイコットなどの抗議活動が発生。在米人権団体によると約1万人が拘束されたという。
 関西地方の30代のバトさん(仮名、以下同じ)の自治区に住む姉も昨年9月、子供を学校に行かせなかった。警察は姉に「ボイコットは日本にいる弟の指図か」と詰問したという。「当局は、姉が外国の反中勢力と結託していることにしたい」(バトさん)からだ。姉は最後まで否定した。
 「日本在住のモンゴル族の誰がどこに住み、何をやっているかも全部知っている」。関東地方の40代のオチルさんは昨年11月、自治区の情報当局者にこう言われ、震え上がった。
 オチルさんによると、西日本に住むあるモンゴル族は、当局から仲間の情報を提供するよう求められ、年15万元(約240万円)の報酬を提示されたが断ったという。

◆同じ民族が監視…誰が?分からない不気味さ

 同じ民族同士を監視させ合うのは共産党の常とう手段で、今に始まったことではない。バトさんは、2018年に故郷に一時戻った友人から後日、こう耳打ちされた。「おまえの情報を教えるよう、当局に指示された」と。この友人は素直に明かしてくれたが、「ほかに自分を監視している人がいても、何ら不思議ではない」とバトさんは言う。
 自治区出身の在日モンゴル族は推定1万人以上。誰に監視されているか分からない不気味さゆえ、表立って抗議の声を上げにくい雰囲気が醸し出されていく。
 東海地方の30代のバヤルさんは「これまでウイグル族への弾圧を見て『まさか自分たちには…』と思っていた。今、その『まさか』が現実になろうとしている」と話し、希望が失われていく民族の前途を憂えた。

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