寄生された生魚 食べたら激痛 アニサキス症、18年になぜ増えた? 目黒寄生虫館が解明

2021年2月18日 07時16分

調査の過程を説明する目黒寄生虫館の巌城隆研究室長

 サバなどの魚やイカに寄生する線状の寄生虫「アニサキス」。人が生の魚介類を食べてこの寄生虫が体内に入ると、激しい腹痛などを起こす。そうした「アニサキス症」が、実は二〇一八年に多発していたという。なぜか? 原因を調べて結果を解説する特別展を開催中の「目黒寄生虫館」(目黒区下目黒四)を訪ねた。
 JR目黒駅前から権之助坂を下り、徒歩十分ほど。日曜に同館を訪ねると、カップルや親子連れなどでにぎわっていた。
 同館は毎年、寄生虫を巡るテーマで特別展を開催。昨年から今年三月二十八日までは日本人に最も多い寄生虫病「アニサキス症」を取り上げている。

アニサキスの標本

 同館によると、アニサキスは九種類いて、魚などの内臓や筋肉(身)に直径数ミリのとぐろを巻いて寄生。人の胃や腸壁に侵入すると腹痛などの症状を起こす。「内臓にかみつく、などといわれますが、実際はアレルギー反応で痛みを起こすと考えられています」と、同館研究室長の巌城(いわき)隆さんは説明する。
 アニサキス症の症例報告は一三〜一九年に年間八十八〜四百六十八件あるが、国立感染症研究所の調査では年間七千件超と推定されるという。そんな同症が、一八年に多発。しかも、カツオが原因のものが急増した=図参照。なぜか?
 同館は一八年春から一九年秋までに各地で水揚げされた百十七尾のカツオを解剖した。調査では五種七百四十五虫が見つかり、多くは内臓にいた。内臓は調理の際に除去されるので危険は少ない。怖いのは筋肉についている場合。調査では筋肉から見つかったのは二種四十二虫で、ほとんどが「シンプレックス」という種類だった。また、一虫をのぞくすべてがハラス部分(肋骨(ろっこつ)周りの筋肉)から検出されたという。
 カツオは回遊魚で、毎年春になると黒潮に乗って日本近海を北上。この時期に捕れるのを「初ガツオ」、三陸沖まで北上し、Uターンして南下するのを「戻りガツオ」と呼ぶ。しかし、回遊コースは毎年同じとは限らない。一七年夏以降、黒潮は大蛇行。「その影響で、北上するカツオの群れの動きや漁場が前の年とは違っていたと考えられます」と巌城さん。つまり一八年は、筋肉に入り込む種類の「シンプレックス」が多くいる海域を通り、寄生されたカツオが水揚げされたようだ。
 加熱すればアニサキスは死ぬので、ハラス部分を生で食べないことが、同症の危険を大きく減らすという。同展では安全に食べるためのアドバイスや今回の調査の手法なども紹介しており、来館者が見入っていた。

◆コロナ禍苦境、ファンが支援 来月末まで特別展

週末には多くの人が訪れる目黒寄生虫館

 目黒寄生虫館は一九五三年にできた私設の研究博物館。寄生虫によって起きる「寄生虫病」の研究を続けた医師亀谷了(かめがいさとる)氏(一九〇九〜二〇〇二)が、研究や啓発のため私財を投じて建てた。
 国内外で集めた寄生虫約六万点の標本を所蔵し、このうち約三百点の液浸標本や資料などを展示。現在は公益財団法人が運営している。入館料は無料だが、事業は入館者らの寄付などにより支えられている。
 ところが昨年はコロナ禍で三〜六月に臨時休館。来館者も減少して大幅な減収になってしまった。このためネットなどで寄付を呼びかけたところ、これまで国内外から一千三百万円を超える額が集まったという。同館が多くの人から愛されている証しだろう。
 文と写真・岩岡千景
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