妄想爆発 ファミカセアート 架空ゲームをラベルにデザイン 西荻で今年も作品展

2021年2月19日 07時08分

ファミカセの魅力を語る坂上聡之さん。「カラフルでかわいいところも、海外からの憧れを誘う理由ではないか」と言う

 こんなゲーム、あったらいいな。懐かしのファミリーコンピュータのカセット型ソフト(ファミカセ)に妄想を尽くした絵を描く「わたしのファミカセ」。2005年に中央線沿線のクリエーターらが始めた展示会は、世界から参加者が集まるイベントへと育った。
 西荻窪駅から、青果、精肉、洋品店が軒を連ねる「西荻北銀座街」を歩いて五分ほど。目指す店は、パン屋さんの二階にあった。
 デザイナーの坂上聡之さん(45)が営む雑貨店「METEOR(メテオ)」。八畳ほどのこぢんまりとしたスペースで、ゲームのイメージをデザインに取り入れた衣類やアクセサリー、絵画などを販売している。ギャラリー会場にもなる。今は、ゴールデンウイークに予定する十七回目の「わたしのファミカセ展」の開催準備を進めている。
 「METEOR」は二〇〇〇年にオープン。当時は吉祥寺にあった。武蔵野美術大学でグラフィックデザインを学んだ坂上さんはフリーデザイナーをしながら、レコードや雑貨を売った。ゲーム好きだったからゲームがモチーフのアパレルブランドや「チップチューン」というジャンルのゲームミュージックのCDを扱った。「当時はあまりなかった店。面白いものを探す人がやってきた」
 あるとき、ファミカセが額縁のように見えてきた。自分が作りたいゲームのストーリーを表現したら面白そうだと思った。「ファミコン世代」で展示会をやろうと、知り合いに声をかけたら二十人くらいが集まった。絵を描く人ばかりではない。ミュージシャンやダンサーもいた。

過去の応募作品。90×43ミリのラベルが奥深い物語へと誘い込む=杉並区で

 二年目の〇六年、来場者による人気投票を始めた。一位は翌年の展示会のチラシの表紙を飾る。初代の一位は「FAMILY WATCH」。ゲーム機に差し込むとテレビが時計になるという。一位に選ばれるほど面白い作品なのか、いまひとつピンとこないが…。
 「使われていないファミコンを役立たせようということだったのでは」。あのころは多くの家庭に、ファミコンがあった。それが、新しいゲーム機が出るようになって、ほこりをかぶるようになっていた。一〇年の一位「カイロ」も似たような発想だ。本来の機能から離れた利用の提案が、斬新だったようだ。
 しばらくはクリエーター仲間で競っていたが、来場者から「自分もやりたい」という声が出て、一〇年に一般公募を始めた。SNSで紹介され、海外にも知られるようになった。昨年は応募総数二百七十本のうち、国内作品は七十七本。確認できただけで二十八の国と地域から応募があり、最多は米国の九十五本だった。
 米国では、ファミカセ展に出品された作品が本物のゲームになっている。マニアが自作ゲームを披露する「A GAME BY ITS COVER」というイベントがあり、一年に百本くらいがゲーム化されているという。この活動に坂上さんたちは、まったくのノータッチ。「意図しないことが自然に起きた」
 ネット検索すれば、ゲームのプレー動画が見つかる現代とは違い、昔は、レコードを「ジャケ買い」するようにパッケージのデザインを見てソフトを選んでいた。「ソフトを買う前にゲームの内容を想像する。ゲームをやらなくても、した気分になる。それがファミカセの楽しさだと思う」。架空ソフトでも、脳内プレーなら永遠に遊べる。

◆過去の人気投票1位発表!

<カイロ> 本体に差し込んで電源を入れると通常のカセットより温度が上昇する。プレイ時間が長いと部屋が暖まって暖房器具となります。ゲーム自体もカセットが熱くなるくらいだから結構熱中しちゃうらしい?

2010年(荒井順一/背景美術)


<ロースハム(スライスハム)> 朝ごはんは元気のもと、「ロースハム」を食べよう!パン、サラダ、ライスにも。おなじみロースハムを「調理する」とさらに美味しくなるらしい。さあ、ロースハムを食べて、楽しい一日の始まりだ!

2020年(マルアン商会/駄玩具・土産物の企画製造販売)


<インスタクエスト 承認欲求の神々> 突如心に巣喰った悪魔を鎮める為、承認欲求を満たす旅に出た。アプリを駆使してカリスマインフルエンサーを目指せ。

2018年(タナゴ@チームタナゴ/グラフィックデザイナー)


<和解村> このゲームは、いわゆる腹と腹の読み合いだ。さあ将軍様の君は、うまく魔王の条件を飲み込み、経済制裁を解除し、資本金を手に入れることができるか?

2019年(MATSUMO/デザイナー)


<接待ゴルフ> このゲームの目的は良いスコアではありません。時にはミスショットで相手に華を持たせ、時にはあえて好ショットを連発して相手のライバル心をあおり、顧客のハートをガッチリつかみ、契約を勝ち取ることがゴールなのです。顧客は「ウチの係長」「取引先の社長」「官僚」「国会議員」など全256種類。

2012年(kamonegi/会社員)


※17回目の「わたしのファミカセ展」は、4月29〜5月31日にMETEORで開催。作品の応募期間は3月1〜31日。個人、グループどちらでも参加できる。サイズは一般的な90×43ミリに限る。詳細は、サイト「わたしのファミカセ展2021」で。
 文・浅田晃弘/写真・五十嵐文人
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

関連キーワード


おすすめ情報

TOKYO発の新着

記事一覧