DV相談が過去最多 被害者支援の見直しを 民間団体が提言

2021年2月19日 07時34分
 ドメスティックバイオレンス(DV)被害者を支援する民間団体の全国組織、NPO法人全国女性シェルターネット(東京)が、被害者らの声を集め、支援のあり方を抜本的に見直すよう関係機関に提言した。DV被害は深刻で、全国の配偶者暴力相談支援センターへの相談は二〇一九年度、十一万九千二百七十六件と過去最多に。支援の強化・拡充が求められる中、目指すべき支援のあり方とは。 (小林由比)

◆のしかかる精神的・経済的負担

 「シェルター(避難所)を出て、夫の生活圏から離れ、知らない土地で仕事を始めなければならないのに、(子どもをスムーズに)保育園に預けられず、一時預かりを利用しなくてはならなかった」「なんとか住宅を確保し、新しい生活を始められたのに、相手に居場所が見つかり、再度シェルターに引っ越し。資金繰りに本当に困った」−。
 シェルターネットが昨秋実施したDV被害者や支援者百七十三人へのアンケートには、被害者にのしかかる精神的、経済的な負担を訴える声が多く寄せられた。共同代表の北仲千里さん=写真=は「全てを置いて家を出る苦労はとても大きい。そもそも被害を受けた側が仕事や子どもの学校など生活を断ち切られ、逃げ回るのはおかしい」と指摘する。

◆相談が増えても一時保護は減少

 被害者が生活を立て直す第一歩は、シェルターに入って安心を取り戻すこと。だが、相談数が増える一方で、公的な支援機関である婦人相談所が一時保護する明確な基準はなく、受け入れ人数は減っている。
 「『DV』=『身体的暴力』=『目に見えるもの』というのが日本の認識。私は精神的、経済的DV=『見えない』支配から逃げてきた」「夫が暴力を振るわないように自分の気持ちや行動を抑え、子どもたちも気を配って生活していたことは考慮してもらえない」。殴る蹴るなどの暴力以外の被害は認められにくく、一時保護にたどり着きにくい状況を嘆く声も相次いだ。

◆保護命令の要件に“身体的暴力”

 DV防止法は、DVを身体的な暴力のほか、「これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」と定義。だが、加害者に対する接近禁止などの「保護命令」を裁判所に求める要件は身体的暴力に限られており、「一時保護の判断にもこの規定を当てはめ、精神的、経済的、性的などのDV被害者の保護に消極的な現場も多い」と北仲さんは言う。
 公的に保護されない被害者を広く受け入れているのが、全国に約百二十カ所ある民間シェルターだ。ただ、札幌市でシェルターを運営するNPO法人女のスペース・おん代表理事の山崎菊乃さん(63)は「婦人相談所から委託されたケース以外には委託費が出ない」と問題点を挙げる。

◆民間シェルターは高齢化・資金難

 アンケートでは「相談や申請手続きがワンストップ化されておらず、同じことを何度も聞かれ疲れた」「一時保護につなげるだけといった『ぶつ切り』支援でなく、継続的、長期的な支援が必要」といった声もあった。山崎さんらは、プライバシーが保護されたマンションの一室などをシェルターとして提供したり、行政書士など専門職と連携して生活に必要な手続きを進めたりと、きめ細かく長期にわたる支援をしている。
 民間シェルターの多くがスタッフの高齢化や資金難に悩み、近年は閉鎖も相次ぐ。「民間シェルターがなくなれば、DV対策は立ちゆかなくなる。若い世代が専門性のある仕事として働けるよう、保護施設として法的に位置付けるべきだ」と山崎さん。北仲さんは「配偶者暴力相談支援センターの運営を民間団体に委託する自治体も出てきた。行政の予算で枠組みをつくることが必要」と話す。

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