時蔵 襲名40年 初心に立ち返って 歌舞伎座「三月大歌舞伎」

2021年2月19日 08時01分

三千歳への思いを語る中村時蔵

 東京・歌舞伎座の「三月大歌舞伎」で、中村時蔵(65)が一年余ぶりに歌舞伎座の舞台に立つ。今年は、立女形(たておやま)の大名跡である中村時蔵を五代目として襲名して四十年の節目。「年のことは意識していません。いつまでも若いつもりでいます」と話しながらも「早くお客さまが100%入って元のようになれば」とコロナ終息を願う。 (山岸利行)
 三月は第二部「雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち) 直侍(なおざむらい)」で、主人公・片岡直次郎(尾上菊五郎)の恋人の遊女・三千歳(みちとせ)を演じる。

三千歳を演じる時蔵(c)松竹

 河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)の名作「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」のなかで、直次郎を中心に展開する、通称「直侍」で知られる物語。悪事を重ね追われる身となった直次郎と三千歳との逢瀬(おうせ)が艶(つや)やかに描かれる。
 これまで何度もつとめた役だが、「(三千歳の思いは)ストレートなので、やりやすい役。本当は(直次郎と)一緒になりたい、逃げたい。それでなければ殺してくれと。直さんが好きの一点です」と、一途(いちず)さを強調する。
 何度もやっていると「これでいいのかな」と思うことがあるという。「いつも初心に立ち返って習ったことを思い出す。慣れは怖い」と身を引き締め、「清元の音色とマッチした面白さやしんしんと降る雪の風情、江戸の風情などを見ていただけたら」と話す。
 昨年はコロナ禍で、二月の歌舞伎座に出演後、十月の国立劇場まで観客を前にした舞台に立つことができなかった。今は「芝居ができる喜び」をかみしめ、「こんな時だからこそ、喜んでいただける芝居をつとめなければいけないと思っています」。

◆「戻駕色相肩」 松緑「舞踊の華やかさを」

浪花の次郎作への思いを語る松緑(c)松竹

 第一部では、尾上松緑(46)が常磐津の名作舞踊「戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)」に出演する。
 桜が咲いた京の郊外。浪花の次郎作(松緑)と吾妻の与四郎(片岡愛之助)の駕籠(かご)かき二人がそれぞれ大坂と江戸の自慢話を始める。やがて、駕籠の中の禿(かむろ)たより(中村莟玉(かんぎょく))も交えて踊っていたが…。
 「愛之助さんとは若いころからの深い付き合い。いろいろ芝居をしてきて気心が知れている。与四郎が二枚目で、次郎作が三枚目というキャラクター。息の合った舞台をお見せできたら。莟玉さんも頼もしい後輩」と話す。
 駕籠かきの二人だが、実はお互いに因縁のある相手であることが分かる。荒唐無稽なストーリーといった面もあるが、「筋というより舞踊の華やかさ、形の奇麗さを見ていただければと思います。(コロナ禍の)こんな時期なので、明るい踊りで晴れやかな気持ちになっていただけたら」。
 昨年六月に始まったオンライン企画「紀尾井町家話」では歌舞伎俳優とのトークを配信している。「生の舞台を見に来てくださる入り口になれば」と、歌舞伎の裾野拡大にも目配りを忘れていない。

浪花の次郎作を演じる尾上松緑(c)松竹


◆三月大歌舞伎◆

 ◇第1部(午前11時開演)「猿若江戸の初櫓」(中村勘九郎、中村七之助ら)、「戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)」(松緑、片岡愛之助ら)
 ◇第2部(午後2時開演)「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) 熊谷陣屋(くまがいじんや)」(片岡仁左衛門、中村錦之助ら)、「雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち) 直侍」(尾上菊五郎、時蔵ら)
 ◇第3部(午後6時30分開演)「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」(中村吉右衛門、松本幸四郎ら)、(Aプログラム)=「隅田川」(坂東玉三郎、中村鴈治郎)、(Bプログラム)=「雪」(玉三郎)、「鐘ケ岬(かねがみさき)」(玉三郎)
 公演は3月4〜29日(11、22日は休演)。チケットホン松竹=(電)0570・000・489。

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