韓国で初めてトランスジェンダーを公表した弁護士 日本の当事者とともに差別と闘う【動画】

2021年2月19日 14時00分

トランスジェンダー弁護士として活動する理由を語る朴韓熙さん=2月、韓国ソウル市で(相坂穣撮影)

 保守的な家族観が強く残る韓国社会で、朴韓熙パクハンヒさん(35)は出生時の性別と心の性が異なるトランスジェンダーを初めて公にした弁護士だ。新型コロナウイルス禍でLGBTなど性的少数者への差別が改めて浮き彫りになる中、日本の当事者とも勇気を分かち合い、多様な生き方が受け入れられる社会を目指す。(ソウル・相坂穣)

◆コロナ対策で「アウティング」恐れ…

 朴さんの訴えが注目されたのは、ソウルの繁華街梨泰院イテウォンで新型コロナの集団感染が発生した昨年5月。同性愛者が多いクラブで集団で踊る客を撮ったとされる動画がネット上に流れ、差別的な報道も出た。
 文在寅ムンジェイン政権が誇る「K防疫」は情報公開の徹底が柱。感染者の年齢や性別、自治体によっては住所まで公表した。本人の望まない性自認の暴露「アウティング」を恐れる人々が、検査を回避するとの懸念が出た。
 朴さんは「同性愛者がコロナを広めたと強調するのは差別だ」と訴え、保健当局や政治家と折衝。集団感染の現場付近にいた人が、本名や住所を明かさなくても検査を受けられる指針づくりを促した。検査率は向上し、「首相や市長に『差別は許さない』と強いメッセージを出させる契機になった」と手応えを語る。

◆「女のふりするな」人格攻撃も相手にせず

 こうした活動の原点は、10代で自分は女性だと意識しながら、偏見を恐れて出生時の性別である男性のまま生活した経験だ。韓国は伝統的な家族観を重んじる儒教やキリスト教保守派、徴兵制の影響などで、LGBTに不寛容とされる。朴さんも男子学生として大学で機械工学を学び、大手企業に就職。男性用スーツを着て働き続けたが、次第に「仮面をかぶって人をだましているような苦しみ」が増し、退職した。
 法科大学院に入り、2014年にホルモン治療を開始。家族や知人に「女性として接してほしい」と初めて思いをぶつけた。理解してくれる友人は多かったが、両親は動揺し、受け入れるまで3年かかった。
 17年にソウル市内で少数者支援に取り組む法律事務所に入り、ネット上でトランスジェンダーを公表。「女のふりをするな」「病院に行け」などと人格を攻撃するコメントが1日で10万件以上殺到したが、削除し相手にしなかった。

◆家族関係が似ている日本と韓国

韓国ソウルで2018年に開かれたLGBTのパレードで交流する杉山文野さん(右)と朴韓熙さん=杉山さん提供

 心の支えが、日本のLGBT当事者との交流だ。特に東京都新宿区を拠点とするトランスジェンダーの杉山文野さん(39)には感銘を受けてきた。同性カップルを「結婚相当の関係」と認める同性パートナーシップ制度を15年に渋谷区が導入した際の立役者だ。
 朴さんは「日韓は儒教文化圏で、親や家族との関係も似ており、互いに力になれる。韓国ではまだないパートナーシップ制度なども積極的に学びたい」と話す。杉山さんも「日本以上にLGBTに厳しい韓国で、弁護士として先頭に立つ朴さんに勇気をもらう。コロナ禍で社会的弱者が追い込まれる状況は日韓で共通しており、学び合いたい」と再会を望んでいる。

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