「記憶にない」→「一部は事実」→「発言あった」 更迭の総務省幹部、小出しの接待説明 

2021年2月20日 06時00分
 放送事業会社「東北新社」に勤務する菅義偉首相の長男による接待問題は19日、総務省幹部2人の事実上の更迭劇に発展した。情報流通行政局長から官房付となる秋本芳徳氏は、同省が許認可権を持つ衛星放送事業が首相長男との会食で話題になったことを認め「記憶にない」と繰り返していた姿勢を転換させた。省内の調査や国会答弁の信頼性が揺らいでいる。(清水俊介、村上一樹)

◆国会答弁の信ぴょう性揺らぐ

 「BS、CS、(東北新社の子会社が手がける)スターチャンネル等に関する発言はあったかもしれないが、よく覚えていない」
 総務省の原邦彰官房長は19日の衆院予算委員会の冒頭、省内の調査に対する秋本氏の回答を読み上げた。この後、秋本氏本人が予算委で「今となっては、発言があったのだろうと受け止めている」と答弁。首相長男が国家公務員倫理規程上、接待や金銭の提供を受けることを禁じた利害関係者に当たるとも認めた。
 問題の発覚当初の総務省は「調査中」を理由に説明を避ける場面が目立った。秋本氏は衛星放送などの話題について、調査に「記憶にない」と回答。17日の衆院予算委でも「記憶はない」と明言した。
 週刊文春(電子版)が17日、会食時の会話を録音したとする音声を公表すると、秋本氏は18日、衛星放送事業の新規参入に積極的な自民党の小林史明元総務政務官をやり玉に挙げた部分のみ事実と認めた。だが、事業関連の話題は「記憶はない」と答えた。
 事実関係を少しずつ認める「小出し」の説明に野党は反発。19日の衆院予算総務委で、立憲民主党の後藤祐一氏は「記憶にないというのはウソだった」と批判。省内の調査に関し「(秋本氏が)記憶にないとの答弁で(国会審議に)行くことに、違和感を覚えなかったのか」と武田良太総務相に迫った。

◆「行政がゆがめられたことはない」

 秋本氏の姿勢転換で、武田氏が「本事案により、放送行政がゆがめられたということは全くない」と断じた国会答弁の信ぴょう性も揺らいでいる。
 野党側は19日、衆院議院運営委の理事会で「誤った答弁だ」と追及。共産党の本村伸子氏は衆院総務委で、首相答弁に合わせるように財務省が公文書を改ざんした森友学園問題を引き合いに「総務相が『ゆがめられたことは全くない』と言ったことで、それに合わせるように(結果ありきの)調査になるのではという疑念がある」と指摘した。
 衆院予算委では立民の山岡達丸氏が「首相の子息がいるから『忖度そんたく調査』が行われたのでは」と手心を加えた可能性に触れた。

◆野党「第三者で調査を」

 野党側は第三者による調査の必要性を主張し始めた。信頼性が揺らいでいるだけでなく、東北新社側への便宜供与があったのかという核心部分を素通りしたまま、調査が終わる可能性もあるからだ。
 省内の調査は、人事院の国家公務員倫理審査会の助言を受けながら進めており、審査会の担当者は19日の衆院総務委で「行政権限をゆがめることは、倫理法令の適用とは違う」と説明。力点は接待の有無にあり、会食時の会話の内容は直接的な調査の対象にならないとの考えを示した。
 これに対し、野党側は「職務怠慢と言わざるを得ない」「国民が納得できるよう(調査の)体制を抜本的に組み替えていくべきだ」と強調した。

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