原発の「安全神話」再生産に警鐘鳴らす 福島第一原発事故から10年で民間事故調が報告書を出版

2021年2月19日 21時46分
福島原発事故10年検証委員会がまとめた「民間事故調最終報告書」

福島原発事故10年検証委員会がまとめた「民間事故調最終報告書」

 東京電力福島第一原発事故後の課題を検証した民間有識者による「福島原発事故10年検証委員会」が19日、最終報告書を刊行した。原発の再稼働が進む中、電力会社側に「(事故後にできた新しい)規制基準に適合するだけで事足れりとする発想がある」と指摘。安全追求をおろそかにして起きた事故の教訓が生かされていない、と批判した。(小野沢健太)
 検証委は、2012年2月に事故調査報告書を発表した民間事故調で作業に当たった鈴木一人東京大教授(国際政治)が座長を務め、シンクタンクの研究員ら8人で構成。事故の教訓が、電力各社の対策や原子力行政に生かされているかを検証課題とし、19年8月~20年3月に東電や規制委事務局、国会議員ら37人に聞き取りした。
 報告書では、政府が「世界一厳しい」とする原発の新規制基準が導入された結果、「もう事故は起こらない」との印象が国民に広がり、「新たな安全神話を再生産してしまった」と警鐘を鳴らしている。
 事故後に、原発を推進する経済産業省から独立して発足した原子力規制委員会が、新基準を細部まで守るよう求め、電力会社側も要求に応えることが目的化してしまい、「規制当局と事業者が対等に安全向上を議論する機運が生まれなかった」と指摘した。
 例えば、検証委は、東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)を調査。非常時に原子炉などへ注水する消防車42台が、10台ほどずつ固まって並んでいることに対し、地震や津波で同時に使えなくなるリスクを避けるための「分散化が不十分」と問題視した。
 東電は検証委への回答で「基準に適合していると確認されている。同じ原因で軒並みに機能を失うことはない」と、規制委のお墨付きを理由に正当化。これに対して検証委は「規制要求の有無にかかわらず、リスクを低減するために合理的な方法を追求する姿勢であるべきだ」と批判した。
 報告書は市販されており、B5判変形、312ページ。税抜き2500円。

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