メタンは牛のげっぷだけじゃない CO2に次ぐ温室効果ガス、濃度上昇にアジアが影響<地球異変>

2021年2月20日 06時00分
 地球温暖化の原因となる温室効果ガスのうち、二酸化炭素(CO2)に次いで多いメタンの濃度が上昇しているのは、中国での石炭採掘増加や南、東南アジア地域の畜産業の発展が強く影響していることが、国立環境研究所などの研究グループの分析で分かった。(福岡範行)
 メタンはCO2の約25倍の温室効果がある。研究グループは過去30年間の大気中のメタン濃度を解析。大気中のメタン濃度は、1999年に上昇から横ばいに転じた後、2007年から再び上昇している。
 グループによると、メタンの放出源はメディアで話題になることが多い牛のげっぷ以外にも、化石燃料の採掘や、ごみの埋め立て処分場からの発生が多い。
 07年以降の濃度上昇は、中国での石炭採掘増加によって地中にたまっていたメタンガスが出たことや、南アジアや東南アジアなどで人口増加に伴い畜産業が拡大したことが大きい。
 再上昇分の60%以上は東、南、東南の各アジア地域の影響と推計。グループは、温暖化対策を進めるために「放出の場所や起源を把握することは極めて重要だ」と指摘する。
 ただ、発展途上国での畜産業の拡大を抑えてしまうと、先進国との「食事の格差」が縮まらない恐れがある。グループの一員で、国立環境研究所物質循環モデリング・解析研究室の伊藤昭彦室長は「家畜の問題は地球全体で考えるべきだ」と話す。
 研究論文は20年12月、日本気象学会が英文で刊行している気象集誌のオンライン版で公開された。天気予報や大気汚染の予測にも活用されるシミュレーションを応用し、世界各地の地上からどのようにメタンが放出されたのかを分析。微生物が出したメタンは軽く、石炭など化石燃料由来は重いという性質を利用し、大まかな放出源も推定した。

◆日本は減り具合が鈍化

 国内のメタン放出量は1980年代の平均値に対し、2000年代に35%減少した後、減り具合が鈍化している。政府は、排出量の8割を占める稲作や畜産などの農業分野での対策に力を入れている。
 これまでに大きく減ったのは、ごみの埋め立て処分場から出てくるメタン。生ごみなどを直接埋めずに焼却したり、処分場内の地中に空気が入る仕組みにしたりして、微生物によるメタンの発生を抑えた。ただ処分場での対策は全国的に定着しており、大幅に放出量を減らす余地は少ない。
 課題の農業での排出抑制について、農林水産省は水田の水を抜く「中干し」期間を長くして空気が土中に入りやすくし、メタン発生を減らす取り組みを進める。
 「中干しが長くなると稲の生育が悪くなる」と心配する農家も多く、政府は21年度からモデル地域での実証研究を始める。
 牛のげっぷは、えさに不飽和脂肪酸カルシウムを混ぜると減らせるため、政府は同年度から酪農家の支援に乗り出す。

おすすめ情報

福岡範行記者の新着

記事一覧