[ジャガイモの世界] 愛知県知多市 早川紗文夏(さやか)(9)

2021年2月21日 07時47分

◆わたしの絵本

イラスト・まここっと

◆300文字小説 川又千秋監修

[天使] 東京都新宿区・主婦・41歳 尾町仁美

 「寝ている時は、天使なんだけどねー」
 子育てママからよく聞く会話。
 確かに、寝ている時は可愛(かわい)いけれど私には張り合いがなくて物足りない。
 やんちゃで手がかかって大変でも、コロコロ元気に遊び回ってる姿が、私には、一番天使に見える。
 そんな息子が、もう小学生。私の後を追いかけ回すこともなくなって、何でも一人でできるようになってきた。
 学校、友だち、習い事…。
 家族みんなが慌ただしく一日を終える。気づけば、「お互いの表情をじっくり見る時間」は生活の中からなくなっていた。
 「大きくなったなぁ…」
 しみじみ顔を見られるのは、みんなが寝静まった後の少しの時間。
 そこには、まだあどけない天使が眠っている。

<評> 子育てママの幸せ時間を、300文字にギュッと閉じ込めたような作品です。いつまでも見つめていたい、かけがえのない瞬間を積み重ねて、新しい未来が育っていきます。明日の成長を見逃さないで!

[幸せのおくすり] 津市・パート・31歳 岩田沙祐里

 ガラス瓶には幸せが詰まっていた。
 金のふたを開けて、小さなガラス瓶に銀の匙(さじ)を突っ込む。
 透き通った濃い赤を小皿に取り出せば、とろりとした中に、見覚えのある小ぶりの果実が姿を現す。
 イチゴのジャムだ。
 お菓子の代わりにジャムをそのまま一匙。口にした果実に歯を立てると、潰(つぶ)れて果汁が漏れ出す。
 じわりと、甘酸っぱいイチゴの風味が広がった。
 「…美味(おい)しい」
 さらに一匙、二匙。
 甘いものを食べると、幸せホルモンが分泌されるという話は本当らしい。
 瓶を空にしたころ、頬に流れる涙がようやく止まる。
 「…会いたい」
 大好きな人。どうか、太る前に会いに来てね。

<評> 人はそれぞれ、さまざまな場面で幸せ時間を噛み(か)み締めます。この作品ではただ甘ったるいだけでなく、舌の上に残る果実のざらつきと、独特の酸っぱさがアクセント。次回が気になるワンシーンです。


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