機内に亡き娘の席と食事を用意… NZ地震から10年、両親が現地の支えに感謝

2021年2月22日 06時00分
 日本人28人を含む185人が犠牲になったニュージーランド地震の発生から22日で10年を迎える。留学中に亡くなった名古屋市守山区の看護師鈴木陽子さん=当時(31)=の両親、喜久男さん(74)と千鶴子さん(73)は毎年、現地の追悼式典で手を合わせてきた。今年は新型コロナウイルスの影響で入国できないが、これまでに触れた現地の人々の優しさに「感謝の思いが尽きない」と語る。

亡くなった鈴木陽子さんの遺影と、両親の喜久男さん(左)と千鶴子さん。似顔絵はニュージーランド在住の陽子さんの知人が描いた=名古屋市守山区で

 陽子さんを含む115人は、クライストチャーチ市内のビル倒壊に巻き込まれた。警察は、設計者の過失を捜査したが立件を断念。同市長は昨年2月、喜久男さん、千鶴子さんら遺族と面会し、初めて公式に謝罪した。「つっかえていたものが取れた」と喜久男さんは語る。

◆「海外で看護師をしたい」夢果たせず

 日本国内で看護師として働いていた陽子さんは「海外で看護師をしたい」と、ニュージーランドで英語を学んでいた。夢を果たせずに旅立ったまな娘を悼むため、両親が毎年足を運ぶうち、大切に思える人たちが増えた。
 遺骨を飛行機で持ち帰った際、陽子さんのための席と食事を用意してくれたニュージーランド航空のフライトアテンダントの女性とは、その後も交流が続いた。女性は既に退職したが、昨年の渡航では自宅で食事を振る舞ってくれた。

◆ボランティアが通訳しながら…涙

 毎年、ボランティアで通訳をしてくれる女性は、市長の謝罪を隣で訳しながら、涙を流してくれた。知り合ったころは大学生だったが、今は弁護士となった。いずれも「娘が引き合わせてくれた、かけがえのない人たち」(喜久男さん)だ。

◆先住民マオリの言葉で「忘れない」

 2017年には、先住民マオリの協力でクライストチャーチに高さ3メートル、長さ110メートルの慰霊の壁が造られ、陽子さんの名前も彫られた。「亡くなった者たちを忘れない。支えてくれた者たちに感謝をささげる。私たちは共にあって強くなれた」とマオリの言葉で刻まれている。協力したマオリの人々にも昨年会い、感謝の気持ちを伝えたという。
 今年の追悼式典は、オンラインで見守る喜久男さんと千鶴子さん。今後も、できるだけ現地に足を運ぶつもりだ。喜久男さんは「娘があこがれたニュージーランドを、これからも見守りたい」と話している。(鈴木凜平)

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