<ブルボン小林 月刊マンガホニャララ> (22)漫画賞 選考会まで「まるで漫画!」

2021年2月22日 07時10分
 小学館漫画賞の選考委員を続けて気付けば十一年目を迎える。
 もはや委員の中では最古参だが、年々楽しくなる。今年はコロナの影響で、北海道在住の島本和彦委員がリモートでの参加となった。
 広い会議室で、距離をとって着席する。大スクリーンには島本委員が映る……はずが、画面に大写しになったのは、怪しげなドクロ男。

選考会のモニターに現れた悪役(?)。指をさしているのが社長です

 「なにやってんですか!」スタッフにツッコミを入れられ、すぐに島本さんになった。後で聞いたら『サイボーグ009』の悪役が同様のモニター会議をしていたことを思い出し、リハーサル中にこさえたという。石ノ森キャラを即興で描けるのはさすがだが、選考会まで漫画みたいだよとしみじみ嬉(うれ)しくなった。
 文学の賞なんかは「賞」らしく厳かで構わないが、漫画の賞(や評)は漫画のようであるべきだと常々僕は思う。弾んでいて愉快で、ズッコケたり、ときに大事な瞬間にちゃんと勇気を発揮するのであれかし。だって漫画を読み、漫画に生きている人のすることなんだから。
 今年の選考は児童向け部門が殊に激しかった。男子向け、女子向けが交ざるから比較が難しい。二作の候補『ショコラの魔法』と『デュエル・マスターズ』シリーズへの六人の委員の票は三対三に割れた。

◆みづほ梨乃『ショコラの魔法』

『ちゃお』(小学館)などに掲載。既刊20巻。

 『ショコラの魔法』は二〇一一年度の選考でも候補になった。これぞ漫画だ! と僕は熱心に推したが他の支持を得られず受賞を逃している。
 ダークヒーローという存在が漫画にはある。『ゴルゴ13』のデューク東郷や『ブラック・ジャック』がそうだ。敵か味方か分からない、影を感じさせるヒーローだが、本作の主人公ショコラは久々に漫画界に降臨した、華のあるダークヒロインだ。

ダークヒロインのショコラ。罰を与えるだけでなく、人間の弱さを奪っていくことも =みづほ梨乃『ショコラの魔法tricky beans』から

 食べればどんな願いもかなうチョコを売っている、謎めいたショコラティエ。願いの成就と引き換えにその人の大切なものを奪う。
 「私のチョコは高いわよ」含み笑いで放たれる台詞(せりふ)とともに供されるスイーツを、友の成功を妬(ねた)み失脚させんとする女や、恋人を奪おうとする女が食べる。いったんは願いがかなうが、最後には必ず凄惨(せいさん)な罰が待つ。「強欲で愚かな者」「人を妬むよこしまな者」と前半の呼びかけを毎回変えて「黒き闇に落ちなさい」と罰が発動するヤマ場が毎回、実に小気味いい。もっと悪いことして、もっと悪い目にあえ、と読者の顔も少し悪くなっちゃう。

◆松本しげのぶ『デュエル・マスターズ キング』

『月刊コロコロコミック』(小学館)で連載中。既刊2巻。他にシリーズ71巻。

 『デュエル・マスターズ』は実在のカードゲームを描き、大迫力のバトルを展開する。
 超長寿連載で、何度も父親が死んだ(ことになった)り、病気の弟に主人公が切り替わったり、通読すると無茶苦茶(むちゃくちゃ)な展開だが、子供読者は数年で卒業して入れ替わるのらしく、それでも楽しませようという漫画の生物的運動をみるようで、畏敬の念さえ湧く。見開き二ページの一ページ半を使ってかっこいいドラゴンを、残り半ページで状況説明してみせる技量も鮮やか。どちらがより優れた作品か、判定できない!
 激論の選考は膠着(こうちゃく)状態となったが、最後は児童を含む三部門で二作同時受賞を認めた小学館社長が、まさに漫画の中の社長みたいに輝いてみえた(……ちょっと、テレビショッピングの社長みたいでもあった。「二部門、ではなく三部門」「本当ですか!?」みたいな)。
(ぶるぼん・こばやし=コラムニスト)
 *次回は3月22日掲載。題字とイラストは中山墾(こん)さんです。

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