【動画あり】エジプト人がネコをかわいがる理由 かつては「神」

2021年2月22日 14時00分
 ネコの鳴き声「ニャン・ニャン・ニャン」の語呂に合わせ、日本では2月22日は「ネコの日」。中東のエジプトでは古代エジプト時代から人々がネコをかわいがり、その風潮は現代にも受け継がれている。イスラム教でもネコを大切にするよう説かれ、暮らしの中にネコが溶け込んでいる。(カイロ・蜘手美鶴、写真も)

◆ムハンマドの教え「ネコを大切に」

カイロの路上でみかけるネコの餌場=蜘手美鶴撮影

 カイロ市内のある薬局店。化粧品やシャンプーなどが並ぶ陳列棚の一角で三毛猫が丸くなっていた。女性店員は「店で飼っているわけじゃないけど、別に追い払う理由もない。そのままにしている」と気に留める様子もない。店の入り口にはネコ用の水をためた小さな器もあった。
 こうした光景はエジプトでは珍しくない。歩道にはネコ好きの人が設置した餌場や水飲み場があったり、ある省庁内ではネコがわが物顔で階段を上り下りしていたり。ネコを邪険に扱う人が極端に少なく、生活空間にネコが溶け込んでいる。誰かしらが路上のネコに餌を与え、地域全体で世話をしている雰囲気もある。
 背景にはイスラム教の影響も大きく、預言者ムハンマドの言行録(ハディース)では「ネコを大切にするように」と説いている。駐車場の警備員マフムード・フサインさん(57)は、家の残り物を仕事場近くの路上にいるネコに与えているといい、「特にネコが好きではないが、ハディースにも書いてある。ネコはこんなに小さくて、家もない。かわいそうじゃないか」。

◆ミイラも突出して多い

 エジプト人とネコのつながりは、紀元前までさかのぼる。古代エジプトでは、ネコは穀物を荒らすネズミや害虫を退治するため重宝され、「守護の力」を持つともいわれてきた。悪霊や病気から人や家を守る古代エジプトの神「バステト」は頭部がネコで、多くの信仰を集めてきた。

13日、エジプト・シナイ半島のシャルム博物館で展示中の紀元前のネコのミイラや立像=蜘手美鶴撮影

 死後の世界でも守護の力は求められ、人間のミイラと一緒に多くのネコのミイラも埋葬された。カイロ南郊のサッカラ周辺では8万点以上のネコミイラが出土し、動物のミイラの中でも突出して数が多い。
 ネコのミイラやバステト立像の展示で知られるシャルム博物館(シャルムエルシェイク)のムハンマド・ハサニーン副館長は「ミイラの数から考えても、当時の人たちがネコを神聖視し、とても大切にしていたのが分かる。ネコは古代エジプト人の生活の一部だったといえる」と説明する。

◆コロナで捨て猫が増加

 ただ、日本と同様、路上のネコへの苦情がないわけではない。基本的に行政の殺処分がないエジプトでは、高級住宅街などで「ネコが庭のイスで爪研ぎをする」などの苦情が管理会社に寄せられると、困った管理会社が毒入りのエサを与えて処分するケースもある。

カイロ近郊ギザの保護施設で1月下旬、ネコの保護状況について話す「動物のための慈悲の家」のサーベル代表

 こうしたネコを救おうと、カイロ近郊ギザの動物保護団体「動物のための慈悲の家」はネコ用の保護シェルターを運営し、約2000平方メートルの敷地に現在180匹が暮らす。処分されそうになった路上のネコのほか、飛行機への持ち込みを拒否され空港に置き去りにされたネコ、飼い主が逮捕されて世話する人がいなくなったネコなどを、連絡を受けて引き取ってくるという。
 新型コロナウイルスの流行後は、「ペットからコロナが感染する」などの理由でネコを手放す飼い主も多く、これまでに50匹以上を保護した。ペットのネコは路上生活に適応するのが難しく、シュラフ・サーベル代表(41)は「一度飼った以上は家族。ネコを捨てるのは自分の娘や息子を路上に置き去りにするのと同じで、飼い主の事情で捨ててはいけない」と話す。

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