最大の謎 白根悠花

2020年1月19日 02時00分

イラスト・瀬崎修

 友だちと遊んだり、しゃべったりしていると、一時間はとっても短い。特に、社会見学や遠足は短く感じてしまう。行き帰りのバスや電車もあっという間だ。
 でも、苦手な授業や退屈な時間は、日が暮れるんじゃない? ってくらい長い。
 寒い冬の日の体育は、もう最悪だ。学校は、半そで、半ズボンがルールだから、元気な友だちは、寒い日でも、半そで半ズボンで笑っている。私は半そでの上にトレーナーを着て、長くつ下を思いっきり引っ張って授業を受けている。
 どれも同じ一時間なんて、とても思えない。すごく不思議だ。もういろんな事を習ってきて、たくさんの事が分かってきた。だけど、今の自分の最大のナゾは時間かもしれない。(東京都世田谷区・小学生・9歳)
◇ ◇ ◇ ◇

接遇 近藤明日美

 お客さまは神様、おもてなしは日本の心。わが職場でも、接遇マナーが取り入れられた。
 まずは表情。親しみやすい笑顔で、お客さまの心を掴(つか)む。
 次は身だしなみ。古くさい服装はやめて、真新しいスーツに身を包み清潔感をアピール。
 威圧的な言葉遣いや態度など、もってのほか。丁寧な所作とトークが信頼感を生む。
 庁内もリフォームして、きれいなオフィスに改築した。
 さあ、本日最初のお客さまだ。とびきりの挨拶(あいさつ)でお迎えしよう。
 「いらっしゃいませ! 閻魔(えんま)庁へようこそお越しくださいました。わたくし、裁きを担当させていただきます閻魔大王と申します」
 丁寧な動作で名刺を渡す。
 「それでは早速、あなた様の罪状を検(あらた)めさせていただきましょう」 (千葉市稲毛区・看護師・29歳)
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柿の木 能村孝

 その柿の木は、住居を建てた時に苗木を買ってきて、小さな庭の一隅に植樹したものだ。
 三十年近くが過ぎて大きく茂った柿の木は、毎年、果実を実らせていたが、隣家の車庫の屋根に落ち葉をまき散らすようにもなった。
 それを防ぐため、枝を切り始めたが、落とす以上に枝が生えてくる。
 いたちごっこのように枝切りをしていたら柿の実が減ってきて、一昨年の秋には、とうとう一つも実らなかった。
 そこで、柿の木を前に庭師の義兄と相談。
 「もう柿も実らなくなったから、秋に葉が落ちたら、根元から伐採してしまいましょう」ということになった。
 ところが、その秋、柿の実が十個近く実った。
 三十歳の柿の木は、私たちの相談を聞いていたのだろうか。
 (金沢市・無職・72歳)
◇ ◇ ◇ ◇
 日々の学びから時間認識という奥深いテーマに出会った小学生作家、白根悠花さんの「最大の謎」。その真っすぐな好奇心を忘れずに、未来の自分をのびのび育ててください。
 業態の垣根を越えてますます広がる職場改革の波、近藤明日美さんの「接遇」。丁重にお迎えしたお客さまも、新時代に即した巧みな言い逃れで無罪を主張してくるかもしれません。
 住まいと共に歴史を刻んできた、能村孝さんの「柿の木」。目の前で処分の相談をされてはたまりません。おいおい、ちょっと待て! と、底力を発揮してみせました。

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