<学ぼう!ワクチン 新型コロナと闘う>(上)なんで打つの? 感染の予行演習 免疫を付ける 

2021年2月23日 07時33分

医療従事者を対象に接種が始まった新型コロナウイルスのワクチン=19日、名古屋市中区の名古屋医療センターで

 医療従事者を対象に十七日から接種が始まった新型コロナウイルス感染症のワクチン。四月以降は高齢者らへの接種も始まるが「打つ」「打たない」は自分で決めないといけない。判断するには、仕組みや効果、安全性についてしっかり理解することが必要だ。そこで「今さら聞けない」といった内容も含め、全三回で解説するのが、この連載。初回のテーマは「そもそもワクチンって何?」。 (植木創太)
 「ワクチンは何のために打つのか」。答えは「免疫を付けるため」だ。
 免疫とは、細菌やウイルスといった病原体を取り除こうと働く防衛機能。日本ワクチン学会理事で、藤田医科大教授の吉川哲史さん(59)によると、大きく分けてもとから体に備わっている自然免疫と、獲得免疫の二つがある。
 病原体が体内に入ると、まず働くのは自然免疫。病原体を食べたり分解したりする。続いて活躍するのが獲得免疫だ。自然免疫を担う細胞から受け取った情報を基に、病原体を見分け、武器となる「抗体」をつくったり、感染した細胞を殺すリンパ球をこしらえて戦ったりする。次に入ってきたときに素早く攻撃できるよう、病原体の特徴を覚えておく機能もある。
 病原体や、その一部を体内に入れ、二つの免疫が働きやすいようにするのがワクチンだ。「あらかじめ戦い方を覚えさせる」という吉川さんの説明が分かりやすい。
 大まかに二種類あり、一つは弱毒化した病原体を体内に入れ、軽く感染させる「生ワクチン」。麻疹や風疹を防ぐMRワクチンなどがこのタイプだ。もう一つが毒性を失わせるなどした病原体やその成分を接種し、記憶させる「不活化ワクチン」で、日本脳炎、肺炎球菌を予防するワクチンなどが当てはまる。インフルエンザは両方のタイプがあるが、日本で承認されているのは不活化だけだ。
 一方、国内で医療従事者に接種が続く米ファイザー製は、世界で初めて実用化された技術を採っている。ウイルスの設計図である遺伝物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を人工的に合成。非常に壊れやすいため脂質の膜に包んで接種、細胞に取り込ませることでウイルスの成分を体内でつくらせる。その結果、抗体ができ、感染に備えて戦い方を記憶させられるわけだ。変異に対応した作り替えも容易という。
 世界の感染者数の累計は二十一日現在、一億一千万人。死者は約二百四十六万人にも。特効薬がない中、この一年、感染を収束させることができた国・地域は世界中どこにもない。自然感染によって感染が広がりにくくなる「集団免疫」の状態にするのは時間がかかる上、その間も死者や重症者は増え続ける。
 吉川さんによると、ワクチンで免疫を付けるメリットが大きいのは、医療従事者に続いて接種が始まる高齢者だ。発症してしまうと重症化する確率が高いためで、三十代を「1」として国内の重症化率を比較すると、六十代は二十五倍。七十代は四十七倍、八十代では七十一倍にもなる。
 「収束への切り札」の期待が高いワクチン。次回二十四日は、見込まれる具体的な効果、反対に現時点では分からないことなどを整理する。

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