未払い報酬にサインの西川前社長、証人尋問で何語る 24日からケリー被告公判<ゴーン元会長事件>

2021年2月24日 06時00分
 日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(66)の役員報酬を実際より少なく有価証券報告書に記載したとして、金融商品取引法違反罪に問われた元代表取締役グレゴリー・ケリー被告(64)の公判で24日から、検察側立証の重要な柱となる書類にサインを残していた西川さいかわ広人前社長(67)の証人尋問が始まる。これまでの公判で役員らが相次ぎ「元会長には何も言えなかった」と証言する中、前社長は何を語るのか。(山田雄之)

◆「不正に近い行為、できませんと言えなかったのか」

 「報酬を開示せずに受け取れる方法を考えろ」
 志賀俊之元最高執行責任者(COO)は東京地裁の証言台で、ゴーン元会長から2011年2月、そう迫られたと説明した。そのうえで「不正に近い行為だと思っていた。なぜ、すぐに『できません』と言えなかったのか…」と悔やんだ。
 ゴーン元会長の11年3月期~18年3月期の報酬のうち、91億円を記載しなかったとされる事件の審理は、起訴後に国外逃亡した元会長不在で進められている。
 争点は、現在も支払われていない91億円が報酬に当たるか否か。検察側は10年3月期から報酬の開示が義務化されたことで、ゴーン元会長がケリー被告に報酬の一部を後払いする方法の検討を指示したと主張。被告側は「確定した報酬はなく、記載の必要はなかった」と無罪を訴えている。

◆幹部7人証言「自信過剰になり 子飼いで固めるように」

 昨年9月の初公判以降、日産役員ら7人が証言に立った。「彼は自信過剰になり、ルールや道徳を破るようになった」と語ったのは、03~08年に共同会長を務めた小枝至元相談役。元会長は1999年の来日当初は日本人社員の名前も積極的に覚え、各事業所に足を運ぶ「真面目な努力家」だった。だが経費削減で業績をV字回復させる中、「子飼いばかりで周囲を固めるようになった」という。
 小枝元相談役はケリー被告の弁護人から「なぜゴーン元会長に意見しなかったのか」と問われ、「何を言っても聞いてくれない。私1人では止められなかった」と答えた。
 一方、ハリ・ナダ専務執行役員は、未払い報酬に関する書類に誰がサインするかケリー被告に尋ねた際、「西川前社長の名前が出た」と証言。書類には実際に西川前社長のサインがあり、なぜ関わることになったのか、西川氏の法廷での説明が注目される。
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◆検察と司法取引の元幹部2人、証言の信用性ー裁判所どう判断

 ケリー被告の公判は、検察と司法取引した大沼敏明元秘書室長とハリ・ナダ専務執行役員の証言の信用性を、裁判所がどう判断するのかが焦点となる。
 「未払い報酬の支払い方法について、ケリー被告と何度も検討した。法に触れると思っていた」。大沼元室長は証人尋問で、検察側が描く構図に沿う内容を証言した。ナダ執行役員も、退任後にどう支払うか「ケリー被告の指示で検討を重ねた」と証言した。
 2人が検察への協力の見返りに起訴を免れていることから、ケリー被告の弁護人は「供述は信用性に欠ける」と訴えている。大沼元室長は「検察への迎合は全くない」としつつ、「司法取引で不起訴になると言われ、安心感があった」とも語っている。
 成城大の指宿信教授(刑事訴訟法)は「2人は検察といわば一体の関係にある。裁判所は、証言が客観証拠によって裏付けられたものであるか、慎重に判断するべきだ」と指摘した。

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