東日本大震災から10年 被災した学校、記憶に残して 川口出身の写真家・檜佐さん さいたま市で作品展 28日まで
2021年2月24日 08時29分
泥で汚れたランドセル、焼け残った教室の机やいす…。川口市出身の写真家、檜佐文野(ひさあやの)さん(39)は東日本大震災直後から、被災した学校にカメラを向けてきた。その作品展「東北の学校〜あの日をつなぐ」が二十三日、さいたま市内で始まった。人のにおいが消えた学びやの姿が切り取られ、発生から十年となる震災の実相を改めて伝えている。二十八日まで。 (近藤統義)
檜佐さんは独協大の四年生だった二〇〇三年に渡米し、ニューヨーク在住。音楽や舞台芸術、国連のイベントの撮影など幅広く活躍している。
震災が発生した一一年三月は偶然、一時帰国していた。母親の故郷は宮城県石巻市。食料品を買い込み、カメラを積んでレンタカーで直ちに向かった。
親戚宅の近くにある港町は壊滅状態だった。「どこを見ても信じがたい光景が連続していた。頭が混乱し、何を撮ればいいのか分からなくなった」
幼いころに訪れた市内の小学校も、津波と火災で変わり果てていた。「学校の中は日本全国似通っている。多くの人の記憶を刺激できるかもしれない」。そう考え、学校を被写体にすることに決めた。
その後も帰国するたびに岩手、宮城、福島の被災三県の学校で撮影を続けた。今回は一三年までの約二年間にカメラに収めた約三十点を展示。針が止まったままの壊れた時計、傾いた壁掛けの賞状など印象的なカットが並ぶ。
檜佐さんは作品展の開催に当たり、「あの日が過去のことになりそうな気配が感じられるからこそ、再び強く、この写真を伝えたい」とのコメントを寄せた。
会場は檜佐さんの姉夫婦が経営する浦和区のジュエリー店「シプレ ド・オール」。入場無料。問い合わせは、同店=電048(829)9204=へ。
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