雇用シェアの光と影

2021年2月24日 07時25分
 出版不況で、ある雑誌の編集部が解散した。経営側はスタッフらの雇用を守り、配転させた。経験豊かな編集者、幅広い人脈を持つ営業マンは畑違いの仕事へと変わったが、ほどなく次々と辞めていった。経済的安定もなげうっての思い切った退職に驚いたが、それほどまでに、キャリアや蓄積を否定されたような悔しさが強かったのだとも思う。
 コロナ禍で、業績の悪化した企業が従業員を別の仕事先へと出向させる「雇用シェア」が増えている。入国規制で利用者が激減している航空会社は、家電量販店やスーパーなどに従業員を派遣している。人件費の負担を軽くし、雇用を維持することができる。受け入れ企業側には、優秀な人材を活用し、人手不足を補うメリットがある。
 派遣される人の気持ちはどうなのだろう。あの編集スタッフらのように、割り切れない思いを抱いている人もいるに違いない。
 ただ、コロナ禍で経済は悪化、職を失う人も相次いでいる。先行きも不透明だ。軽々に会社を飛び出すリスクは大きい。よくよく熟考すべきだろう。
 退職させたい従業員を単純作業などの部署に配転、出向させて追い込む「追い出し部屋」が問題になって久しい。「雇用シェア」が追い出しに悪用される恐れもある。企業も大変な時期だろうが、従業員の気持ちに寄り添う姿勢は忘れずにいてほしい。(熊倉逸男)

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