<社説>調布陥没の波紋 リニア工事は大丈夫か

2021年2月24日 07時25分
 東京都調布市の住宅街で起きた市道陥没は、地下四十七メートルの大深度でトンネルを掘り進めた工事が原因である可能性が高いとの調査結果が出た。同じ大深度のリニア中央新幹線工事は大丈夫か。
 調布市の住宅街で昨年十月、市道が幅五メートル、長さ三メートル、深さ五メートルにわたり陥没した。地下四十七メートルでは東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事が進み、事業者・東日本高速道路の有識者委は大型掘削機による工事との因果関係を認めた。地盤に特性があり、掘削機を動かしやすくしようと地中に気泡を注入したために地盤が緩み、土砂を大量に取り込みすぎ陥没につながったという。
 地表から四十メートル以上深い地下は、二〇〇一年施行の大深度地下使用法に基づき、用地買収は不要で公共利用が許されている。深い井戸や温泉などは例外として、大深度に利用価値はなく、土地所有者に損失は生じないとの解釈だ。
 東日本高速はいったん工事を中断し、家屋損傷などは補償する方針だが、住民らの連絡会は健康被害や資産価値の下落も補償するよう求めている。地元では以前から振動や騒音、地盤沈下に悩まされ、不信感を募らせていたようだ。大深度は法的には無補償を原則とするがゆえ、事前に住民とじっくり話し合って信頼関係を構築する機会がないとの懸念はかねて指摘されていた。
 気になるのは、二七年の開業を目指すリニア工事だ。外環道と並び、大深度法が認めた代表的な事業で、東京都品川区−川崎市−町田市(三十三キロ)と愛知県春日井市−名古屋市中区(十七キロ)の大深度で近く着工を予定する。
 今回の陥没で、大深度工事は「地上に影響しない」という大前提は崩れたといえる。より厳密な施工管理は必須であり、工事への疑問に誠実に答えることが求められよう。赤羽一嘉国土交通相がリニア着工前に、外環道陥没の原因究明や、再発防止策の取りまとめが必要との認識を示していることは当然だろう。
 リニアはそれでなくても、南アルプス(静岡市)を貫くトンネル工事による大井川の流量や地下水への影響を巡り、地元とJR東海の対立が続いており、静岡県内の着工は見通せていない。
 道路や鉄道には公益性があるがゆえに国費が投じられたり、特例が認められたりしていることを事業者は肝に銘じてほしい。安全確保や情報開示の徹底など、真摯(しんし)な姿勢を忘れてはならない。

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