【動画あり】ISの犠牲になったヤジド教徒104人、6年ぶり故郷に埋葬 虐殺1300人、3000人不明

2021年2月24日 13時00分

追悼式典の会場に運ばれる棺=住民提供

 イラク北部シンジャール周辺で2014年8月、過激派組織「イスラム国」(IS)によって少数派ヤジド教徒1000人以上が虐殺された。遺体は80カ所以上に無造作に埋められ、現在も掘り起こしと身元確認作業が続く。今月6日、身元確認が終わった104人の遺体が6年半を経て故郷に戻り、家族らの手で埋葬された。 (カイロ・蜘手美鶴)

◆「ISが男性を殺し始めた」「助けて」

 シンジャール近郊クジョ村で6日にあった遺体埋葬の式典。遺族や関係者ら数千人が集い、顔写真が貼られた棺を出迎えた。会場横には真新しい墓穴が掘られ、犠牲者が葬られた。
 「みんなに『あの日助けてあげられなくてごめん』と言いに来た」。出席したヤジド教徒の人権活動家バルザン・シーコさん(32)は、電話取材に打ち明けた。

6日、イラク北部シンジャールで、身元が確認された遺体の棺=人権団体提供

 「あの日」とは、クジョで虐殺が起きた14年8月15日。当時、シンジャールや周辺の村は次々とISに襲撃され、難を逃れた住民は山へ身を隠していた。
 山にいたシーコさんは同日朝、クジョの友人バスマン・マンダカーニさん=当時(28)=から電話を受けた。「ISが男女を別々にし始めた」と慌てた様子で告げ、切れた。山にいた他の人にもクジョから次々と電話が入り、「ISが男性を殺し始めた」「助けて」。武器もなく助けに行けず、クジョで560人が殺害された。マンダカーニさんは今も行方が分からない。

◆身元確認続く242遺体

 虐殺情報を記録する地元人権団体によると、シンジャール周辺では14年8月に約1300人が殺害され、約3000人が行方不明。遺体遺棄場所は84カ所確認され、地元人権団体のハサン・アブドラ代表(38)は「いまだ数千人が埋まっているとみられる。二度と同じことが起きないよう、虐殺を後世に伝える必要がある」と話す。
 イラク政府は19年3月から遺体を掘り起こし、身元確認を開始した。DNA鑑定や当時の服装を手掛かりに104人を特定し、今も242遺体の確認作業が続く。ただ、まだ地中には多数の遺体が残され、全員の身元特定に向けた見通しは立っていない。

◆IS再興の兆し

 イラクでは14年6月にISが北部モスルを制圧し、その後一気に勢力を拡大。ヤジド教徒を「邪教だ」として迫害し、男性を殺害し、女性を「性奴隷」として連れ去った。政府はIS掃討作戦を進め、17年12月に全土解放を宣言したものの、近年再びISが勢力を回復させつつある。
 イラク北部ではクルド自治政府と中央政府の対立が治安の空白を生んでおり、イスラム過激派に詳しいイラク人評論家サマン・ナノーア氏は「両政府の対立はISには再興のチャンス。元戦闘員は地域に多く暮らし、何かきっかけがあれば再び集結する可能性は十分ある」と指摘する。

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