「境界人」として生きてきた名古屋育ちの在日韓国人3世、大韓ラグビー協会の新会長に「日本の協力仰ぎ、発展させたい」

2021年2月24日 14時00分
 大韓ラグビー協会の新会長に、在日韓国人3世の崔潤氏(57)が今月、就任した。名古屋で生まれ育ち、高校、大学時代に選手としてプレー。OK貯蓄銀行を中心とするOK金融グループの会長を務める傍らスポーツ振興にも力を注ぎ、「日本の協力も得ながら韓国ラグビーを発展させたい」と意気込む。(ソウル・中村彰宏、写真も)

崔潤(チェ・ユン)さん 1963年、名古屋市生まれ。名古屋学院高(現名古屋高)でラグビーを始め、名古屋学院大時代は在日韓国人のクラブチーム「愛知闘球団」でプレーした。飲食店経営などを経て99年に韓国移住。金融業を始め、2004年にOK金融グループ会長に就任。プロバレーボールチームのオーナーを務めるなどスポーツ振興に尽力し、プロ野球の中日ドラゴンズで活躍した宣銅烈(ソン・ドンヨル)氏との親交も深い。


「日本の協力を得て韓国ラグビーを発展させたい」と意気込む大韓ラグビー協会の崔潤会長=ソウルで


 ―会長選挙に立候補した理由は。
 昨年まで協会副会長を務め、韓国ラグビーの脆弱な環境を実感した。ラグビー部がある学校はわずか。競技人口も少なく、スポーツとして認知されていない。日本とも1990年代前半までは互角に戦えた時期もあったが、大きく差が開いてしまった。韓国のラグビーを変えたいと思った。
 ―会長選挙では104票のうち78票を得た。
 これまでの協会は村社会のような組織で、一部に権力が集中していた。副会長の時には反発も受けたが、今回の選挙は9割以上の会員が参加し、変革を望む人たちの熱望が結果に表れたと思う。重い責任と使命感を感じている。
 ―会長としての抱負は。
 まずは底辺拡大に取り組みたい。多くの人にラグビーが楽しく、有意義なスポーツということを知ってもらい、草の根から広げていきたい。4年の任期の間、公約を滞りなく実行し、人気スポーツに跳躍できる基盤をつくる。
 ―具体策は。
 子どもたちが学校でラグビーに取り組める環境をつくりたい。韓国の教育は、スポーツや文化、芸術をおろそかにしてきた。韓国政府もその点を認め、スポーツや文化、芸術を学ぼうとする学生を支援する努力を始めている。部活動にラグビーを取り入れてラグビー部のある学校を増やしていきたい。選手が現役を終えた後のセカンドキャリアの支援にも取り組みたい。
 ―日本ラグビーをどう見ている。
 日本も40年ほど前は人気がなかったが、試行錯誤して今の姿がある。トップリーグ創設やサンウルブズのスーパーラグビー参戦など挑戦を続けた。日本代表に外国人を起用する過程では痛みもあったと思うが、日本ラグビー界から学ぶ点は多い。日本協会の協力を仰ぎ、隣国として、いいライバルとして切磋琢磨できるように、ノウハウを伝授してもらいたい。
 ―ラグビーの魅力とは。
 人生とよく似ている。いろいろなタイプの人が協力し、目標に向かっていく。ルールを尊重して敵も味方もお互いを認め合い、チームワークやリーダーシップ、犠牲精神も当たり前のこと。私の人生でもラグビーの経験が生きている。
 ―将来の目標は。
 やはりワールドカップ(W杯)。2019年の日本大会の準決勝、決勝を現地で観戦し感動で涙が出た。10年後か20年後か分からないが、韓国代表がW杯に出場して勝つ姿を見たい。
 ―ホッケーやろうあ者の野球なども支援している。
 自分もプレーしたので、選手の悩みや困難を知っているので解決したい。在日韓国人として日本でも韓国でも、あまり歓迎されない「境界人」の人生を生きてきた。経験した苦難は、マイナーな種目に通じる。支援を通じて人気スポーツになることを願っている。
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韓国のラグビー
 1923年にサッカー大会のデモンストレーションとして行われたのが始まり。46年に大韓ラグビー協会が発足した。チーム数は中学20、高校18、大学9、社会人5。日本のトップリーグにあたる「コリアンリーグ」は5チームで構成。競技人口は約3000人。98年バンコク、2002年釜山のアジア大会で金メダルを獲得した。今年の東京五輪が五輪初出場。現在の世界ランキングは31位。

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