東北新社だけ特別扱い 理由は「分からない」 総務省幹部処分でも消えない疑念

2021年2月25日 06時00分
 菅義偉首相の長男正剛せいごう氏が勤める放送事業会社「東北新社」による総務省幹部らへの接待問題で、同省が24日に公表した調査報告は「(相手が)利害関係者という認識がなかった」など幹部らの不自然な説明を追認してまとめられた。処分は決まったが、正剛氏がいたから接待に応じたのではないか、衛星放送を手がける子会社の許認可に影響を与えたのではないかといった疑念は解消されないままだ。(井上峻輔、村上一樹)

◆「利害関係者と知らなかった」本当か

 調査報告は多くの幹部らが接待を受けていた要因として「自らに都合のよい解釈により、東北新社が利害関係者に該当しないと安易に判断」していたことを第一に挙げた。
 衛星放送は、東北新社の子会社の「囲碁将棋チャンネル」や「スター・チャンネル」など3社が手がけ、総務省から業務認定を受けている。東北新社自体は利害関係者ではないと考えたというのが幹部らの言い分だ。調査に対し「会食の案内状には東北新社の役職のみが記載されていた」「子会社の社長という認識はなかった」などと説明した。
 実際には、正剛氏を含む東北新社側の接待参加者は、子会社の役職を兼ね、報告では東北新社も含めて「利害関係者」と認定した。幹部らは業界を担当する「放送のプロ」で、野党側は「(兼務を)知らなかったなんて到底信じられない」(立憲民主党・奥野総一郎氏)と反発。調査を担当した総務省の武藤真郷秘書課長も「承知しておくべきだし、本当に承知していなかったとすれば職務としては問題」と指摘する。

◆根拠は「当事者がそう言っている」

 接待が常態化していた理由を巡って、報告書は「正剛氏の存在が影響を及ぼしたという事実は確認できなかった」と結論づけた。
 だが、幹部らは調査に「ほかの放送事業者とは同様のことはなかった」として、東北新社とだけ特別な関係を築いていたことを認めた。武田良太総務相は24日の記者会見で「(常態化の)直接的な原因は正直なところ分からない」と説明。正剛氏の影響がないと認定した根拠も「当事者すべてが、そういうことはないと言っている」というだけで「首相への忖度」がなかったと言い切れる材料はない。

◆「幕引きしたいという雰囲気」

 最大の焦点は、接待攻勢が衛星放送の許認可に影響したかどうか。国会では、子会社が2018年に1社だけハイビジョン未対応番組の放送認定を受けたり、業務認定が更新された昨年12月の直前に接待が集中したことなどが指摘されたが、総務省は今回は国家公務員倫理規程に基づき、接待や金品提供の有無を確認するのが目的だとして、報告では許認可問題に触れなかった。省内に検証委員会を立ち上げ「さらなる検証を行う」と記しただけだ。
 衆院予算委員会の理事会で報告を受けた立民の辻元清美氏は「一番の焦点を今後検証すると言いながら、処分を出している。承服しかねる」と批判。「幕引きしたいという空気が漂ってくるが、それはいかん」と強調した。
 報告では再発防止策として、研修の徹底や会食を厳格にチェックする独自ルールの整備などを列挙したが、国民の納得は得られそうもない。武田氏は検証委に関し「行政がゆがめられていないのかという疑念に応える」と約束した。

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