ガラス越しの面会、ためらう家族も コロナ禍で模索続く重度障害者施設

2021年2月26日 18時00分

ガラス戸越しに母親の玲子さん(右)らと対面し、笑顔を見せる藤野翔大さん(左)=柏市の「光陽園」で

 新型コロナウイルスの影響で病院や福祉施設での面会制限が相次ぐ中、重度心身障害者入所施設では、入所者と家族がどう会うかに苦慮している。会話が困難な重度心身障害者とのコミュニケーションはスキンシップや対面での声掛けが大切でオンラインでは意思疎通が難しい。感染防止に神経をとがらせながら、施設側の模索が続く。(太田理英子)
 「しょうちゃーん、お風呂気持ちよかった?」。今月1日、千葉県柏市の重度心身障害者入所施設「光陽園」。同県鎌ケ谷市の藤野良亮さん(73)と玲子さん(68)夫妻がガラス越しに声を掛けると、反対側で車いすに乗った三男翔大さん(30)の顔に笑みが広がった。
 染色体異常や急性脳症の後遺症がある翔大さんは会話ができず視力も弱い。玲子さんがタブレット端末で長男と孫娘2人の動画を再生して話し掛けると、翔大さんは笑い、赤ちゃんの泣き声に反応するそぶりも。15分の面会時間はあっという間に過ぎた。
 園には、3~63歳の入所者84人が暮らす。新型コロナの重症化リスクが高いとされ、昨年2月末に施設内での面会が禁止された。
 昨年11月からは、ガラス越しでの面会に限っているが、今月10日からは職員に陽性反応が出たため一時禁止になった。25日からは再び面会が可能になる。
 入所者の中には、直接面会ができなくなった後、食欲が落ちたり元気をなくしたりする人がみられた。中村仁施設長は「表現ができないだけで、家族に会いたいのだと思う。大半の人は会話ができないので、少しでも近くで顔を見られる方が互いにいい」と説明する。

施設から送られてきた長男康裕さんの写真を眺める田中鈴子さん=野田市内で

 一方、ガラス越しの面会をためらう家族もいる。同県野田市の田中鈴子さん(66)は昨年7月以降、入所する長男康裕さん(38)と面会していない。
 以前はほぼ毎日夕食に付き添い、食べる速度や表情から様子を確かめていたが「触れられない面会はかえって悲しくなってしまいそうで」と明かす。
 藤野さん夫妻は体に触れられない分、翔大さんに動画の音声を聞かせたり、小さな鉄琴を演奏してみせたり、少しでも刺激を与えようと工夫する。
 玲子さんは「普段なら体をさすったり、隣で声を掛けたりすることで家族を身近に感じてくれるのだが」と再び、家族で触れ合える日を待つ。
(2021年2月25日東京新聞朝刊に掲載)

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