<社説>生活保護判決 削減のための削減か

2021年2月25日 06時53分
 生活保護費引き下げは違憲だとして受給者が国などに取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁は取り消しを認めた。原告敗訴の名古屋地裁判決とは逆に「削減額の判断に誤りがあった」と国を批判した。
 厚生労働省は二〇一三年から三年間で、生活保護費のうち食費や光熱費などに充てる「生活扶助」の基準額を最大10%下げた。同省独自の物価指数「生活扶助相当CPI」で算定した減額だった。
 判決が呈した疑問は大きく二点。一つ目は、十一年ぶりに消費者物価指数の上昇率が1%を超えた〇八年に減額算出の起点を置いた点。判決は「特異な物価上昇が織り込まれ、翌年からの下落率が大きくなった」と指摘した。
 もう一つは、テレビやパソコンなど、「教養娯楽用品」の大幅下落幅が同指数の大幅ダウンにつながった点。判決は「国の調査では、被保護世帯の教養娯楽用品への支出は一般世帯よりも相当低い」と述べた。
 これらの観点から判決は、受給者は減額後も健康で文化的な生活水準を維持できる、とした厚労相の判断は「統計数値との合理的な関連性や専門的知見との整合性を欠く」と述べた。そして「(この判断には)過誤や欠落があり、裁量権の逸脱か濫用(らんよう)があって違法だ」と結論づけた。
 「10%削減」は、一二年の衆院選で勝ち、政権復帰した自民党の選挙公約。同党への忖度(そんたく)をいぶかる声もあった大幅な減額の不合理さが改めて指摘された形だ。
 厚労省によると、月あたりの生活保護の申請件数は昨年十一月で一万九千件余り。コロナ禍による雇用情勢の悪化が影響してか、微増傾向にある。年明けから東京都や愛知、岐阜県などで緊急事態宣言が出され、申請はさらに増える可能性がある。
 生活保護を巡っては、行政が申請者の親族に援助の可否を尋ねる扶養照会など、申請をためらわせる「壁」の存在も、しばしば指摘される。生活保護を受けるのは憲法が保障する「権利」なのに「施し」と見られかねない社会的偏見をなくしていく必要もある。
 同様の訴訟は東京、静岡、津、富山など全国二十九地裁で始まった。判決は昨年六月の名古屋が最初で「厚労相は国民感情や国の財政事情を踏まえて基準額を改定した。判断が違法とはいえない」と受給者側敗訴だった。二件目の大阪では正反対の判断。今後も各地で審理が進むが、冷静な事実認定に基づく判決を望みたい。

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