鶏卵大手元代表、官僚を取り込み「業界の要望通すため」 農水省幹部ら当初は接待否定

2021年2月25日 21時52分
 菅義偉首相の長男正剛せいごう氏が勤める放送事業会社「東北新社」による接待を受けた総務省幹部らの処分から一夜明けた25日、今度は農林水産省の幹部ら6人が処分された。鶏卵生産大手「アキタフーズ」の秋田善祺元代表(87)=贈賄罪で起訴=からの接待問題。業者が要望をかなえてもらうため、官僚を取り込もうとしていた実態が浮き彫りになった。(小沢慧一、山下葉月、井上真典)

◆「政治家が動いてくれなきゃ」

 自民党衆院議員だった吉川貴盛元農相(70)が農相在任中の2018年11月~19年8月、秋田元代表から現金500万円を受け取ったとして東京地検特捜部に収賄罪で在宅起訴されたのは、今年1月15日。秋田元代表も贈賄罪で在宅起訴された。
 鶏卵業界は当時、国際機関が示す「アニマルウェルフェア(動物福祉)」に基づく飼育環境の厳格化案に危機感を抱いていた。案の通りに止まり木や巣箱が義務化されれば、多額の出費を余儀なくされてしまう―。秋田元代表は、農水省に案に反対してもらうため陳情活動に力を入れており、関係者によると「業界のために現金を渡した」と供述しているという。

秋田元代表の手帳の写し。吉川元農相の大臣退任慰労会に農水官僚も参加していた

 周囲に常々、「政治家が動いてくれなきゃ、物事が通るわけない」と語っていたとされる秋田元代表。ある鶏卵業者によると、「業界の要望を通すために、官僚にも相談に乗ってもらっているんだ」と話すことも。本紙が入手した秋田元代表の手帳からは、18~19年に計約30回、農水省に幹部職員を訪ねていたことがうかがえる。
 職員が業者と面会することに問題はないが、利害関係者からの接待は、国家公務員倫理規程で禁じられている。旧大蔵省の接待汚職がきっかけで00年に施行されたこの規程は、課長補佐級以上の職員には相手が利害関係者以外でも、5000円を超えた場合は報告書の提出を義務づける。

◆農水幹部、当初は口をそろえて「記憶にない」

 今回の処分対象となった接待のうち、東京都内の高級ホテルの料亭であった19年9月18日の会食には、秋田元代表のほか吉川元農相も同席していた。農水省は職員5人がアキタ社から1人当たり2万3000円超の接待を受けたと認定したが、贈収賄疑惑が持ち上がった昨年12月に本紙が事実関係をただした際は、5人とも「記憶にない」と口をそろえていた。
 水田正和生産局長は「覚えていない。そのころはバタバタしていた」と明確に答えず、渡辺毅畜産部長は「記憶にない。倫理規程で決まっているし、接待を受けることはない」と否定していた。
 伏見啓二大臣官房審議官は「覚えていない。一般論だが、大臣に誘われたら断れない」とし、犬飼史郎畜産振興課長は「バタバタしていて記憶にない」と説明。望月健司農地政策課長は「記憶にない。業界関係者と飲食することはあるが、ちゃんとお金は出す」と強調していた。

鶏卵大手からの接待問題で処分された農水省幹部ら

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