<新・笑門来福 春野恵子>「USJのゾンビ」のような公演

2021年2月26日 07時59分

演出の中立公平さん(右)とZoom稽古

 目下、三月に出演させていただくミュージカル「地下鉄一号線」の稽古中である。一九八六年にドイツ・旧西ベルリンで初演された作品で、韓国でもたびたび公演が行われ、上演は通算三千回を超えるとのこと。そんな伝説のミュージカルが大阪の下町を舞台に生まれ変わるというもの。
 とはいえ、緊急事態宣言の最中。Zoom(ズーム)を使ったオンライン稽古、あるいは対面の場合は密を避けるためにマンツーマンの個別稽古のみ。今週末からの皆が集まっての稽古には、全員がPCR検査を受けてから臨むという態勢である。
 この公演自体も、コロナ禍でなければ生まれなかったであろう形で行われる。劇場ではなく野外を移動しながら行う、いわゆるイマーシブシアター形式。まだ日本ではなじみのない言葉かもしれないが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のハロウィーンイベントでスタジオ内のあちらこちらにゾンビが出没する、というのもイマーシブシアターのひとつ、といえばイメージが湧くだろうか(と書いて、これってローカルネタなのだろうかと不安になる。大阪人にとってはUSJのゾンビは風物詩ともいえるくらいメジャーなのだが!)。
 今回の舞台は、通天閣で有名な新世界を抜けた天王寺公園。天王寺動物園のゲート前から、大阪市立美術館前に演者とともに移動しながら観劇していただく。天王寺の街の雑踏さえも効果音になるという趣向。
 さらに観客はヘッドホンを装着し、あらかじめ録音されたせりふや楽曲を聴きながら、演者はマスクをして身ぶり手ぶりで演じたり踊ったり。これもまた、きっかけは感染予防対策を徹底することであったかもしれないが、新たな表現方法としての面白さもあり、わくわくしている。一方で、公演中に通行人が乱入してきたらどう対応したらよいのだろうというドキドキも!
 個人的な課題もある。浪曲の世界では高音も表の声を使うように言われる。裏声を出そうものなら、「裏に逃げた」と言われてしまうのだ。しかし、ミュージカルにはミュージカルの発声があり、そちらに自分のモードをシフトさせるべく奮闘している。演出の中立公平さん、作曲と歌唱指導の西村友(ゆう)さんのご指導を頂きながら、新たな表現にチャレンジする日々である。

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