<社説>鈴木修会長退任 「脱カリスマ」へ結束を

2021年2月26日 08時18分
 スズキの鈴木修会長が退任する。同社は鈴木氏の強い指導力で荒波を乗り越えてきた。未来を託された経営陣は「脱カリスマ」を見据えて社内の結束を図り、新たな企業像を再構築する必要がある。
 鈴木氏は四十四年にわたり代表権を保持してきた。その間、軽自動車の開発・販売、攻略が難しいインド市場進出、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲンとの資本提携と解消などビッグビジネスを次々と手掛けた。
 いずれも社運をかけた決断であり、経営者としての実行力や発想の豊かさは世界トップクラスと言える。
 ただ、九十一歳という高齢に加え、長期の経営支配が権力の集中を引き起こしたとの指摘もある。退任の判断は妥当だろう。
 スズキに限らず世界の自動車メーカーは「百年に一度」と言われる転換期を迎えている。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、水素自動車を軸とした「脱炭素化」の流れはその中心だ。
 政府も二〇三〇年代にガソリン車の新車販売禁止を目指す方針だが、軽自動車を生命線とするスズキはEVやHVの開発が遅れ気味で、大きな課題となっている。
 脱炭素化は、資本・業務提携を結んだトヨタ自動車との協力が欠かせない。ただトヨタに過度に寄り掛かれば独立性を失い、スズキ本来の良さが消えかねない。
 スズキは軽自動車や二輪車を中心に市民生活を意識した車種を次々開発してきた。今後も暮らし密着型の独創的な経営戦略を維持できるのか。
 後を託された新経営陣には、独立性の保持と効率的な提携関係の維持という難題を、同時に進める胆力と知恵が求められる。
 カリスマ的な経営者が去った後は社内が混乱するケースもある。
 ゴーン元会長が逮捕されて国外逃亡する中、経営幹部の不正行為が明るみに出た日産自動車はその典型例だ。 
 社内の混乱は戦略の遅れに直結し、経営に長期間打撃を与える。若い人材を登用しながら談論風発の雰囲気を醸成することがより肝要で、鈴木俊宏社長の手腕が最も問われる課題でもある。
 スズキは、本社を置く浜松市をはじめ拠点とする地域との絆も深い。自動車産業は裾野が広く雇用の担い手でもある。
 新型コロナウイルスの感染終息が見通せない苦しい経営環境の中でも、地域を意識した、ぬくもりある雇用姿勢を貫いてほしい。

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