<社説>総務官僚の接待 処分で幕引き許さない

2021年2月26日 08時18分
 総務省は、菅義偉首相の長男・正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社側から接待を受けた幹部ら十一人を処分した。しかし、許認可への影響の有無は未解明のままだ。処分を幕引きとしてはならない。
 子会社が衛星放送を手掛けていたとしても、親会社の幹部は利害関係者に当たらないと考えていたのなら、よほど情報認識能力に欠けるか、職務怠慢のどちらかだ。
 そのどちらでも放送・情報分野を所管する省庁の幹部にふさわしいとはとても言えない。
 総務省は正剛氏が勤める東北新社による接待を利害関係者からの違法接待と認め、次官級の谷脇康彦、吉田真人両総務審議官を減給十分の二(三カ月)の懲戒とするなど計十一人を処分した。
 また武田良太総務相は、一連の接待が放送行政に影響を与えたか否かを検証するため、副大臣をトップとする検証委員会を立ち上げることを表明した。
 問題の本質は、首相の長男らによる接待が公平・公正であるべき放送行政を歪(ゆが)めたか否かである。
 業務認定が更新された昨年十二月の直前に接待が集中するなど、許認可と接待時期の関係から目を背けてはならない。身内の調査にとどまらず、第三者を加えるか、国会に特別委員会を設置するなどして徹底究明すべきである。
 総務審議官当時に接待を受けた山田真貴子内閣広報官は、すでに同省を退職しているため処分対象とならず、加藤勝信官房長官による厳重注意にとどまった。山田氏は給与の十分の六に相当する七十万五千円を自主返納するという。
 ただ、七万円超の高額接待を受け、利害関係者との認識もなく、申告もしなかった山田氏は、内閣と国民とを結ぶ広報を担う責任者として適任なのだろうか。公務員への信頼を損ねた責任は重い。野党の辞任要求は当然だ。
 こうした接待が霞が関で常態化していることも極めて深刻だ。農林水産省でもきのう、鶏卵生産大手元代表から接待を受けた事務次官らの処分を発表した。
 役所ぐるみの接待漬けがまん延し、お呼びが掛かれば何のためらいもなく出掛けるのが昨今の霞が関なのか。職務に対する緊張感を欠き、全体の奉仕者であることすら忘れてはいまいか。
 統治機構の根腐れとも言える官僚の堕落は、長期政権の弊害にほかならない。野党は問題追及と同時に、自民党に代わる政権像を示し、善意の官僚とともに政権を担う決意を国民に示すべきである。

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