ようこそ!マイホームタウン 三石琴乃×高田馬場

2021年3月24日 12時05分

学びの街、高田馬場


著名人が思い出の街を訪れ、紹介するコンテンツ「ようこそ!マイホームタウン」。今回は、声優/ナレーターとして活躍中の三石琴乃さんが登場します。「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎ役、「新世紀エヴァンゲリオン」の葛城ミサト役、そして2005年以降の「ドラえもん」で野比玉子(のび太のお母さん)役と、誰もが知るキャラクターの声を演じてきた三石さん。そんな三石さんにとって、キャリアの原点になった街が高田馬場だったのです。

恥ずかしがり屋でも目指した声優


 高田馬場と言えば、学生の街。大きな大学とその付属校、色々な専門学校や予備校、近年では日本語を学びに外国人の学生が通う学校も増え、毎年、様々な夢を持った若者がこの街にやって来る。三石琴乃さんもかつてその一人だった。
 三石さんは、高校を卒業後、ここ高田馬場にあった養成所に通い声優を目指し始めた。なぜ、声優になる決心をしたのだろうか。
「小学生のころ、放送委員をしていました。ある時、給食の時間に放送委員が絵本の朗読劇をすることになって。その頃からあがり症で、劇中で『きっちょむさん』と読むところをずっと『ちょっきむさん』と読んでしまって……。しかも本番中、緊張しすぎて間違いに気が付かなくて。そんな失敗がありましたけど、マイクを通じて自分の声が全校生徒に伝わるのは、感動的で魅力的ですごいことだなと思いました。引っ込み思案な私でも、人に楽しんでもらえたり役に立つ仕事があると思ったのは、この経験がきっかけですね」
 アルバイトをしながら、千葉県の実家から高田馬場の勝田声優学院(2015年に閉校)へ通った。平日の夜と週末に授業のある夜間コースを選び、昼間は仕事をした。当時珍しかった専門の養成所でしっかりとした指導をしてくれると評判の学校だった。
「勝田(声優学院)に通い始めた頃も、引っ込み思案で恥ずかしがり屋で。発声や発音の時間は大丈夫でしたが、エチュードという授業がとにかく苦手でしたね。この授業は(声優の)野沢雅子さんが講師をされていました。授業中にテーマを与えられて、それをみんなの前で一人芝居にして発表するんです。怖いから、周りを見ながら恐る恐る手を挙げて……。当てられると、恥ずかしくて手は震え真っ赤な顔で芝居をしたのを覚えています」

「この4月から連続ドラマに初めてレギュラー出演することになって。『新人』の時の気持ちを思い出しました」


卒業制作で感じた芝居の面白さ


 今となっては笑って話せるエピソードだが、授業で感じた緊張感は、三石さんの体からしばらく離れなかった。
「卒業した後、何年かして勝田に行く機会があったんです。その時、授業中の感覚が蘇ってきて、動悸が激しくなったんですよ。胸元まである長めのネックレスを着けて行ったんですが、建物に近づき、教室に向かうとき、そのネックレスが揺れるのが分かるくらい心臓がドキドキして(笑)」
 当時の三石さんにとって人前で演技をすることは、それほど大変なことだった。しかし、この声優養成所に通っていたころの経験が、今に至るキャリアの礎になっている。
「卒業制作で同期のみんなとお芝居を上演することになりました。でも、全員が役をもらって舞台に立てるわけではなくて。私も役をもらえず、演出助手という仕事を任されました。当時の講師で、恩師の故水鳥鐵夫さんについて、細かいことをサポートする係です。ひとつの舞台を作り上げるには、たくさんのマンパワーが必要だと、演出助手の仕事を通じて実感しました。お芝居全体を俯瞰できたのも良い経験でしたし、全員で成し遂げた感動は最高でした」
 三石さんは、卒業後に声優の高木渉さんを始めとする同期生たちと、劇団の立ち上げに参加する。それほど芝居の魅力に引き込まれたのは、この卒業公演があったからだ。
「お芝居の面白さ、みんなでひとつの作品を作り上げる楽しさが分かったのは、この卒業公演があったからです。勝田(声優学院)に通っていなかったら、この経験はできなかっただろうし、演技を仕事にすることもなかったと思います」

アニメ「鉄腕アトム」のお茶の水博士役で知られる声優の勝田久さんが主宰していた勝田声優学院。厳格な指導法は今でも卒業生の間で語り継がれている。今回の取材で、声優学院のあった建物の前まで歩いたが、緊張はしなかったそう。


高田馬場に通っていたころは『イモムシ』の時代


 三石さんは勝田声優学院に5期生として入学。同期生には、同じ業界で活躍する森川智之さんや高木渉さんがいる。昔からの仲間として今でも親交が続いている。
「勝田に通っていた時期は、そんなにお金もなかったし、キラキラした思い出もないんですが……。それでも、授業の後に安い居酒屋や喫茶店に行って、同期の仲間と色んなことを語り合ったり。今、思うと懐かしいですね。不安だらけな時期でしたが、仲間がいたから孤独ではなかったです」
 そんな不安な時期を乗り越えチャンスを掴み、声優としてキャリアを築いてきた三石さん。改めて、キャリアのスタート地点である高田馬場に通っていた頃の「自分」を振り返ってもらった。
「高田馬場に通っていた頃は、鈍臭くて未熟な田舎者で。あの頃の自分はまるで『イモムシ』みたいでした。それから時間も経って色々な役を演じてきましたが、自分が『イモムシ』だったことは忘れてはいけないって思います」
 アニメ作品だけでなく、この4月から初めて連続ドラマに出演するなど、新しい分野への挑戦も続けている。これからも『イモムシ』から成長し続ける姿を三石さんは私たちに見せてくれるはずだ。

◇高田馬場図鑑 三石琴乃さんのオススメスポット


BIGBOX高田馬場
1974年にオープンした高田馬場のランドマーク的な商業施設。ショップやレストランなどが多数入る。「学校の帰りに、ここにあったピザ屋でみんなで集まっておしゃべりした思い出があります」
東京都新宿区高田馬場 1-35-3
http://www.seibu-shop.jp/baba/

ラビネスト
2010年に現在の名前になった小ホール。「卒業制作の公演は、アートボックスという名前だった時に、ここで上演しました。楽屋の独特な雰囲気を今でも覚えています」
東京都新宿区西早稲田3-27-4 第一キャラット河俣B1
http://www.rabinest.com/
※新型コロナウィルス感染症の影響で、掲載したお店や施設が臨時休業していたり、営業時間などが変更になっている場合がございますので、事前にご確認ください。

三石琴乃さんのサイン入り色紙プレゼントは終了いたしました。
ありがとうございました。

◇PROFILE
三石琴乃
アニメ「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎ役、「ドラえもん」の野比玉子役、「ONE PIECE」のハンコック役、「呪術廻戦」冥冥役など、数々のキャラクターを担当。またナレーターとしても活動している。2021年3月公開の映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」では葛城ミサト役を務めた。4月からTBS系で毎週金曜日放送のドラマ「リコカツ」に俳優として出演する。連続ドラマへのレギュラー出演はこれが初となる。
■オフィシャルサイト 「琴ちゃわんdeもう一杯!!」
■Twitter @kotochawanmoon

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