<コロナ下の大学生日記>(2)30分だけ 家族と再会 秋山裕姫乃さん

2021年2月27日 07時12分

家族とはメッセージや電話だけのやりとりが続く(本人提供)

 「明日もしかしたら裕姫乃(ゆきの)に会いに行くかもしれません」
 昨年末、バイトを終え終電で川崎市内の下宿先に帰っていると、姉からLINEが届いていた。山梨の両親と姉の三人が墓参りのために車で東京にやってくるらしい。通り道にある私のアパートに立ち寄っていいかと連絡が来ていた。
 新型コロナウイルスが猛威を振るい、私は三月から実家に帰ることができなかった。現在もメッセージと電話だけでのやりとりが続いている。近況報告の家族写真に、自分がいないことが寂しい。
 Go To トラベルを利用し帰省や旅行をする友人もいたが、私は下宿先に留まり飲食店のアルバイトをしていた。私の母は医療従事者である。仕事で不特定多数と接触している自分が帰省するのははばかられた。正月に帰るのもあきらめていた。しかし、せっかく家族が東京に来るのなら会いたい。少しだけでいいから、家族の顔が見たかった。
 姉から連絡が来た日、東京ではコロナ感染者数が七百人を超えた。「会いたい、会おう」と返信したい気持ちをこらえ、「こんな状況だから会うか会わないかの判断はそちらに任せるよ」と返した。私にできる精いっぱいの「予防」だった。
 翌日、家族と会えたのはたったの三十分だった。寒空の下、アパート近くの駐車場で、距離を保ちながらマスクをしたままの会話。本当にあっという間だったが、久しぶりに見る家族の顔にとても安心した。
 「あと一年お父さんも頑張るから、あんたも頑張りなさいよ」
 帰り際、父は私に仕送りを渡しながら言ってくれた。無愛想な父があんなに優しい顔をしたのはいつぶりだろうか。久しぶりに触れた家族は、とても温かかった。 (専修大文学部三年・秋山裕姫乃)

 新型コロナウイルス流行は、大学生たちの日常を大きく様変わりさせている。対面授業や部活動は制限され、キャンパスにはほとんど通えない。就職活動でもリアルな企業説明会は中止が相次ぎ、オンラインが主流になっている。誰も経験したことがないキャンパスライフを手探りで歩む学生たちは、長引くコロナ下に何を思い、どんな日々を送っているのか。川崎市多摩区の専修大学文学部人文・ジャーナリスト学科の学生たちのリポートを、不定期で連載します。

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