<選ぶちば2021 知事選争点の現場から>(上)「医師少数県」の過疎地 コロナ対応、さらなる苦境

2021年2月27日 07時15分

いすみ医療センターのナースステーション。看護師たちは少ない人員で、新型コロナウイルスの対応にも追われる=いすみ市のいすみ医療センターで

 全国で「医師少数県」と位置付けられている千葉県。特に医師や看護師不足が深刻な地域の医療機関では、新型コロナウイルス対応も重なって負担は増す一方だ。コロナの対応で外来診療が制限されると、今後の経営が厳しくなる医療機関も出る恐れがある。
 「近場に病院は少なく、手術は千葉市で受けた。かかりつけ医は茂原市内で、周りも町外まで通院する人ばかり」。甲状腺疾患など複数の治療を受けている一宮町の女性(76)は、こう嘆いた。地元では、大きな手術や高度な救急医療はできず、近隣都市が頼りだが、近年は都市部でも病院の経営悪化が目立つ。「大病院さえ立ちいかなくなれば、行き場を失ってしまう」と危機感を覚える。
 県はこの三十年間、人口十万人当たりの医師数が全国で四十五〜四十六位と低迷。厚生労働省が公表する地域ごとの医師の充足度を表す「医師偏在指標」でも、二〇一九年度の全国平均が二三九・八だったのに対し、県は一九七・三で全国三十八位。県内の医療圏別でもっとも指標が低いのが、女性が住む一宮町など県東部十七市町村で構成する「山武長生夷隅」圏だ。
 同圏内南部のコロナ診療の拠点を担う「いすみ医療センター」(いすみ市)でも、慢性的な医師と看護師不足が続く。伴俊明病院長は「自分が来た二十年ぐらい前から状況は変わっていない」と話す。
 いすみ市と大多喜町、御宿町が設置する同センターは、約五年前から常勤の整形外科医はゼロ。看護師確保も難航し、九十六床あった一般病床を一時半減せざるを得なかった。病床数は徐々に戻すことができたが、毎年三億〜四億円規模の赤字が続く。二〇年度は他病院からの派遣などで医師や看護師の体制を整えたが、新型コロナ拡大で状況は一変した。
 感染症専門医がいないため、研修を実施しながら、昨年四月から軽症・中等症患者用の病床四床を稼働した。一般病棟を半減してコロナ病床を拡充した。伴病院長は「かかりつけの患者が入院できず、心苦しいこともあった」と話す。
 脆弱(ぜいじゃく)な医療体制をぎりぎりで支えているのが、積極的なPCR検査だ。昨年六月に独自にPCR検査を行う「感染症特別検査室」を設置し、発熱外来も実施。早めに感染者を見つけ出すことで、感染爆発を未然に防いでいる。
 だが、この体制もいつまで維持できるか不透明だ。今春から他病院からの医師派遣が一部打ち切られる。外来診療を縮小する必要があり、減収は避けられない。センター事務局の担当者は「今後どれだけ一般の入院患者が戻るか見通せない」。
 医療過疎地での医師不足解消のため、県は〇九年から医師を目指す学生に、県内で一定期間勤務すれば返済を免除する学費貸付制度を実施している。現在、同制度を利用した百十八人が県内の医療機関で勤務しているが、産科、小児科の医師の人手不足は依然として顕著。効果は未知数だ。
 伴病院長は「このままでは医療機関としての存続も危うくなる。人材確保が急務だ」と課題を投げ掛ける。 (太田理英子)
     ◇
 任期満了に伴う知事選は、三月四日告示、同二十一日に投開票される。現職の森田健作知事は退任を表明しており、十二年ぶりの知事交代となる。県政課題を医療、台風被災地、経済の現場から探る。

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