<社説>メルケル氏後継 人権と自由重視の人を

2021年2月27日 07時23分
 ドイツのメルケル首相の後継選びが進んでいる。人権や自由を重んじる同氏の価値観を引き継ぎ、欧州をリードし、国際協調を重視する新たな「ドイツの顔」が選ばれるよう、望みたい。
 メルケル氏は州議選大敗などの責任を取り二〇一八年十二月、保守与党、キリスト教民主同盟(CDU)の党首を辞任。後任党首にクランプカレンバウアー氏が選ばれたが、同氏も党内をまとめ切れずに辞意を表明していた。
 先月十六日に実施された党首選で三人の男性候補から、西部ノルトライン・ウェストファーレン州首相のアルミン・ラシェット氏(60)を選んだ。同氏はメルケル氏に近い中道路線で移民難民への寛容政策も支持。一方で、カリスマ性には欠けるとされていた。
 保守回帰を訴える候補もいた中、リベラル色を強めるメルケル路線が改めて支持された形だが、ラシェット氏の演説の力も大きかったようだ。炭鉱で働いていた父親の教えとして、重要なのは宗教や出自の違いではなく、同僚を信頼できるかどうかだ、と述べ、結束と自らへの支持を訴えた。
 米国ではバイデン政権が発足、国際協調機運の高まりが期待されている。ドイツでも、メルケル路線継続を掲げる新与党党首が誕生したことを歓迎したい。
 しかし、ラシェット氏はまだ、首相候補になったわけではない。
 CDUは南部バイエルン州が基盤の姉妹政党、キリスト教社会同盟(CSU)と統一会派を組む。会派の首相候補は両党の協議で決まるが、CSU党首で同州首相のゼーダー氏はコロナ対策で手腕を発揮し、全国的にも人気が高い。
 現政権はCDU・CSUと、中道左派、社会民主党との大連立。寛容政策への不満から、新興右派政党「ドイツのための選択肢」が支持を伸ばしたが、現在、メルケル氏の人気は回復している。
 ラシェット氏の真価は、コロナ対策や三月の州議選などで試される。統一会派の首相候補になった上で、九月の総選挙で勝利しなければ首相にはなれない。
 十五年在任してきたメルケル首相の存在は大きい。人権や自由を守るためトランプ前米大統領との対立も辞さず、寛容政策を掲げ、コロナ禍での演説は人々の心を打った。影響力は国際社会へと広がった。国際協調を重視し、世界全体への目配りも忘れない新たなリーダーを選んでほしい。候補者らの切磋琢磨(せっさたくま)にも期待したい。

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